なんてこった!このご時世に、ど真ん中の恋愛小説を読もうとは!

最愛の (集英社文芸単行本) 作者:上田岳弘 集英社 Amazon 『最愛の』上田岳弘著を読む。 コロナ禍なんて随分昔のことのように思えるが、まだ、つい、数年前のことだ。三密を避けるため、企業は社員を在宅勤務、リモートワークさせ、会議はWEB会議になった。…

デビュー作。その出来に圧倒される

パルタイ (新潮文庫) 作者:由美子, 倉橋 新潮社 Amazon 『パルタイ』倉橋由美子著を読み直す。 大学生の時、好きな作家は、女性では、金井美恵子と森茉莉、そして倉橋由美子だった。この作品集、読んでいたはずなのに、まったく読めていなかった。でも、それ…

たった6人を辿れば、世界中の人と知り合いだ

複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線 作者:マーク・ブキャナン 草思社 Amazon 『複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線 』マーク・ブキャナン著を読む。 数字的にはたった6人を辿れば、世界中の人と知り合いだという狭い世界、「ス…

友がき 海がき 川がき

今ここにいるぼくらは (集英社文庫) 作者:川端 裕人 集英社 Amazon 『今ここにいるぼくらは』川端裕人著を読む。 大昔の著者のブログで彼自身は現在SF作家ではないが、SFの土壌から作品が生まれていると書いていた。 この作品は「博士」と呼ばれる小学生と友…

正しくは、『ブローティガン東京日詩 1976.5~6』ではなかろうか

ブローティガン 東京日記 (平凡社ライブラリー) 作者:ブローティガン,リチャード 平凡社 Amazon 『ブローティガン東京日記』リチャード・ブローティガン著 福間健二訳を読む。 ブローティガンが日本にいたのは「1976年5~6月、1ケ月半」だそうだ。旅にして…

続・Linuxとハッカー―「OSを作るというのは、世界を作ることだ」

それがぼくには楽しかったから 全世界を巻き込んだリナックス革命の真実 (小プロ・ブックス) 作者:リーナス トーバルズ,デビッド ダイヤモンド 小学館プロダクション Amazon 『それがぼくには楽しかったから 全世界を巻き込んだリナックス革命の真実』リーナ…

Linuxとハッカー―伽藍方式でいくか、バザール方式でいくか

伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト 作者:エリック・スティーブン レイモンド 光芒社 Amazon 『伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト』エリック・スティーブンレイモンド著を読む。 たとえば新しいラーメンを考案す…

時代を間違えて生まれて来た―公(きみ)の名は後鳥羽院

菊帝悲歌: 小説後鳥羽院 (河出文庫) 作者:塚本 邦雄 河出書房新社 Amazon 『菊帝悲歌 小説後鳥羽院』塚本邦雄著を読む。 NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を見ていたので、歴史的な流れは、それなりに知っていた。ドラマの終盤に後鳥羽院、後鳥羽上皇は登場…

ラブ・ウォーズならぬライブ・ウォーズ

現代思想2004年11月号 特集=生存の争い 医療・科学・社会 青土社 Amazon 『現代思想2004年11月号 特集=生存の争い 医療・科学・社会 』を読む。 目玉は、立岩真也と小泉義之の「生存の争い」という討議。ユーミンのアルバムで『ラブ・ウォーズ』があったが、…

ああ愉快、痛快、奇々怪々の怪奇掌編

大人のための怪奇掌篇 (宝島社文庫) 作者:倉橋由美子 宝島社 Amazon キャッチコピーはアニメ『怪物くん』(第1作)主題歌「おれは怪物くんだ」の歌詞の一部を拝借。作詞は藤子不二雄。AとFがつく以前。 『大人のための怪奇掌篇』倉橋由美子著を読む。 奥付の…

酔いどれ天使の詩―最後のビートニク

ここに素敵なものがある 作者:リチャード・ブローティガン 百万年書房 Amazon 『ここに素敵なものがある』リチャード・ブローティガン著 中上哲夫訳を読む。 第一詩集『リチャード・ブローティガン詩集-突然訪れた天使の日-』リチャード・ブローティガン著…

ペソア入門書、ペソアガイドブック、ペソアファンブック、ペソア布教本…

フェルナンド・ペソア伝 異名者たちの迷路 作者:澤田 直 集英社 Amazon 『フェルナンド・ペソア伝-異名者たちの迷路-』澤田直著を読む。 ペソアの人生と「70もの人格」により書かれた作品を辿り、その魅力やペソア愛が伝わってくる。異なるペンネームで…

『シン・ウルトラQ』がつくられるなら、原作にしたい4つの短篇集

わたしたちの怪獣 (創元日本SF叢書) 作者:久永 実木彦 東京創元社 Amazon 『わたしたちの怪獣』久永実木彦著を読む。SFとかファンタジーとか、なんだろうが、なぜか、懐かしさも感じる。NHKBSで4Kリマスター版『ウルトラQ』や『ウルトラ7』を見ていたが、…

幸なのか、不幸なのか、ともかく、ブローティガンの最後の作品

不運な女 作者:リチャード・ブローティガン 新潮社 Amazon 『不運な女』リチャード・ブローティガン著 藤本和子訳を読む。 「遺品の中から彼の娘が発見した」ノートに綴られたもの。ミュージシャンなら未発表音源デモテープのようなものか。相変わらず好きな…

デジタル音楽全盛、なぜか、でもレコードが人気

音楽未来形―デジタル時代の音楽文化のゆくえ 作者:聡, 増田,文和, 谷口 洋泉社 Amazon 『音楽未来形 デジタル時代の音楽文化のゆくえ』増田聡・谷口文和を読む。 とりあえず気に入ったところ。 「哲学者のヴィレム・フルッサーは「写真の哲学のために」の中…

推し、百合、ケア―「「推し」がいれば何でもできる」

ニジンスキーは銀橋で踊らない 作者:かげはら 史帆 河出書房新社 Amazon 『ニジンスキーは銀橋で踊らない』かげはら史帆著を読む。 天才バレエ・ダンサー、ニジンスキーの妻・ロモラの、まさに波乱万丈(陳腐な言い回しだけど)の半生記。 これまで音楽家のノ…

風刺やブラックユーモアがピリリと利いた老人のための童話集

老人のための残酷童話 (講談社文庫) 作者:倉橋由美子 講談社 Amazon 『老人のための残酷童話』 倉橋由美子著を読む。 いやあ実に久しぶりで。で、この本、風刺やブラックユーモアが利いていて、あっという間に読んでしまった。これから著者の作品をゆるゆる…

あとを引く怖さ―ポップなガーリッシュホラー

寝煙草の危険 作者:マリアーナ・エンリケス 国書刊行会 Amazon 『寝煙草の危険』マリアーナ・エンリケス著 宮崎真紀訳を読む。 「アルゼンチンのホラープリンセス」と呼ばれているとか。核にあるのは女の子の普遍的な脆さと危うさ。劣等感と優越感。それにホ…

泣ける、微笑む、しみじみさせられる、プラトーノフの短篇

ポトゥダニ川 (群像社ライブラリー) 作者:アンドレイ・プラトーノフ 群像社 Amazon 『ポトゥダニ川-プラトーノフ短編集-』アンドレイ・プラトーノフ著 正村和子訳 三浦みどり訳を読む。 作者って全体小説を書くような長篇型の作家だと思っていたが、オーソ…

生きる権利と死ぬ権利―自死の幇助は罪か否か

神 作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ 東京創元社 Amazon 『神』フェルディナント・フォン・シーラッハ著 酒寄進一訳を読む。 元建築家の78歳のゲルトナー。健康状態は良好だが、妻に先立たれて生きる気力を失くし、医師に自死の幇助を求める。死ぬ…

教授、現代アート作家になる―「天然知能」から「天然表現」へ

創造性はどこからやってくるか ――天然表現の世界 (ちくま新書) 作者:郡司ペギオ幸夫 筑摩書房 Amazon 『創造性はどこからやってくるか―天然表現の世界』郡司ペギオ幸夫著を読む。 生命基礎論の研究者であり大学教授でもある著者が、アート作品を創るまでの過…

儚くも美しい鏡の王国の衰亡記―仮面の裏側にあるものは

仮面物語: 或は鏡の王国の記 作者:山尾悠子 国書刊行会 Amazon 『仮面物語-或は鏡の王国の記-』山尾悠子著を読む。 放浪の彫刻師・善助は、立憲君主都市・鏡市を訪れる。その名の通り、鏡の王国。彼は、影盗み。人の顔を一瞥しただけで「たましいの顔」が…

翻訳職人の技と心―平井呈一

迷いの谷 平井呈一怪談翻訳集成 (創元推理文庫) 作者:A・ブラックウッド,他 東京創元社 Amazon 『迷いの谷-平井呈一怪談翻訳集成-』A.ブラックウッドほか著 平井呈一訳を読む。 M.R.ジェイムズは『消えた心臓』、『マグナス伯爵』など。A.ブラックウッ…

『資本論』の逆襲

現代思想2004年4月臨時増刊号 総特集=マルクス 青土社 Amazon 柄にもなくマルクス、マルクス兄弟じゃないよ、ヘイ、ブラザー。 「現代思想4月臨時増刊マルクス」より、最もひかれた論文から一部を引用してみる。 「景気循環のたびに資本の緩衝装置として遣い…

濃厚で芳醇な「瞬篇小説」

夏至遺文 トレドの葵 (河出文庫) 作者:塚本 邦雄 河出書房新社 Amazon 『夏至遺文 トレドの葵』塚本邦雄著を読む。 短篇小説というと、川端康成の掌の小説、星新一のショートショートなどがある。最近では北野勇作の100字小説なんていうのもある。作者は、「…

人がまちがえるのは、脳がまちがえるからだ

まちがえる脳 (岩波新書) 作者:櫻井 芳雄 岩波書店 Amazon 『まちがえる脳』櫻井芳雄著を読む。 ヒューマンエラーを完璧に防ぐことはできない。だって、大もとの脳がまちがえるから。しかし、このまちがいが、災い転じて福となす。その最大の福が独創的なア…

愛は幻―「本能が壊れた動物である人間は幻想する動物である」

唯幻論物語 (文春新書) 作者:岸田 秀 文藝春秋 Amazon 超々久しぶりに岸田秀の本を読み出す。 『唯幻論物語』。自己分析、自己批評。私小説的味わい。この本は小谷野敦へのアンチテーゼ本として書かれたそうだ。出だしからして、岸田節、バリバリ全開。精神…

英雄と悪漢

ピカレスク 太宰治伝 (文春文庫) 作者:猪瀬 直樹 文藝春秋 Amazon 『ピカレスク 太宰治伝』猪瀬直樹著を読む。 太宰というと、相原コージの「コージ苑」に出て来た、憂い顔の和服姿の腺病質の男を思い浮かべてしまう。そのコマには、お約束のように筆文字で…

ケアで文学を批評する、あ、映画もね

世界文学をケアで読み解く 作者:小川 公代 朝日新聞出版 Amazon 『世界文学をケアで読み解く』小川公代著を読む。 これまでケアについて書かれた本が理論編だとすると、この本は展開編、応用編ってとこかな。作者は内外の作品(小説から映画まで)からケアマー…

「農業にも兵器にも使える技術」

戦争と農業(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル) 作者:藤原辰史 集英社 Amazon 『戦争と農業』藤原辰史著を読む。 『歴史の屑拾い』 藤原辰史著で著者が「戦時下、トラクターが戦車になった」という一文があって、もう少し深く知りたいと…