2021-01-01から1年間の記事一覧

生命の「多様性」をひもとく

「生命多元性原理」入門 (講談社選書メチエ) 作者:太田 邦史 講談社 Amazon 『「生命多元性原理」入門』太田邦史著を読む。3つにポイントをしぼってまとめてみた。 1.「全球凍結」「エディアカラ生物群」 「生物は、(一見そうは見えないかもしれないが)外部…

いま、読んだほうが、もっとピンとくる

なぜ「話」は通じないのか―コミュニケーションの不自由論 作者:仲正 昌樹 晶文社 Amazon 家の件で区役所の出張所へ住民票を取りに行くと誤申請だったらしい。それから担当者の執拗な質問に閉口。取り調べかよ、容疑者かよ。 んでもって、歯に不具合が生じて…

「論理は、あらゆる経験に先立だっている」

ウィトゲンシュタイン、最初の一歩 作者:中村 昇 亜紀書房 Amazon クリスマスイブの21時台の世田谷線はガラガラだった。お家パーティでみんな早めに帰宅したのかな。 『ウィトゲンシュタイン、最初の一歩』 中村昇著を読む。心に残ったところを何点か。 2私…

読む、モロトフ・カクテル

まぜるな危険 作者:高野 史緒 早川書房 Amazon 『まぜるな危険』高野史緒著を読む。 作者の『カラマーゾフの妹』は、ドストエフスキーの未完に終わった小説『カラマーゾフの兄弟』の勝手に続編。奇抜な発想に感心したが、長篇に仕立てあげた作者の筆力にも感…

世界を肯定する哲学。つっても保坂和志じゃないよ、トマス・アクィナス

世界は善に満ちている: トマス・アクィナス哲学講義 (新潮選書) 作者:山本 芳久 新潮社 Amazon 『世界は善に満ちている トマス・アクィナス哲学講義』山本芳久著を読む。哲学に関心のある学生と哲学者の対話で話が進む。 トマス・アクィナスって中世のスコラ…

難解キャンディーズ

ラカンによるレヴィナス 他者と死者 (文春文庫) 作者:内田 樹 文藝春秋 Amazon 『他者と死者 ラカンによるレヴィナス』内田樹、読了。 読後感は、はじめて作者の著作を読んだときの感じに似ている。「ためらいの倫理学」「レヴィナスと愛の現象学」を上梓さ…

きみは、ピエール・バルーを知らない

サラヴァ・フォー・カフェ・アプレミディ アーティスト:オムニバス,ピエール・バルー,ピエール・アケンダンゲ,ジャン=ロジェ・コシモーン,イジュラン,アレスキー&ブリジット・フォンテーヌ,ジョエル・ファヴロー オーマガトキ Amazon きみは、ピエール・バル…

奈落の底までI LOVE YOU !

浮雲 【東宝DVD名作セレクション】 高峰秀子 Amazon 昔、書いた映画評。 ほんとうは、映画は、映画館の大きなスクリーンで見るのがいちばんなのだが、おウチで見るビデオ、これは、これで、小市民的幸せなのではなかろうか。などと、自己弁護しながら、紹介…

ぼく、ブロッコリー。通称、コリー。お払い箱のジョッキー(騎手)ロボット

千個の青 作者:チョン ソンラン 早川書房 Amazon 『千個の青』チョン・ソンラン著 カン・バンファ訳を読む。 ぼく、ブロッコリー。通称、コリー。元々ぼくはヒューマノイド(人型ロボット)。ジョッキー(騎手)ロボットとして競走馬トゥデイとレースに出ていた…

思った以上の出来栄えと上から目線で称賛したいミステリ&奇譚集

幽霊紳士/異常物語 (柴田錬三郎ミステリ集) 作者:柴田 錬三郎 東京創元社 Amazon 『幽霊紳士/異常物語-柴田錬三郎ミステリ集-』柴田錬三郎著を読む。 読んだことはないが『眠狂四郎』の作者が書いた本格ミステリ。さほど期待しないで読んだら、当たり!…

暗号作成者と暗号解読者の絶えざる闘い

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで 作者:サイモン シン 新潮社 Amazon 『暗号解読 ロゼッタストーンから量子暗号まで』サイモン・シン 青木薫訳を読む。 著者の前作の『フェルマーの最終定理』は、肝心要のフェルマーの最終定理はチンプンカンプン…

批評を書きあぐねている人のために

批評の教室 ──チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書) 作者:北村紗衣 筑摩書房 Amazon 『批評の教室-チョウのように読み、ハチのように書く-』北村紗衣著を読む。 劇評、映画評、書評などいろいろな批評がある。ひとつ、自分も書いてみるかと…

コキコキ 子機 こき使う

戦後思想の一断面―哲学者廣松渉の軌跡 作者:熊野 純彦 ナカニシヤ出版 Amazon いつの間にか無線LANができなくなっていたPC。ネットを見ていたらwinndows10にアップグレートしたが、PCのWi-Fi(無線LAN)機能がそれに対応してないとか。どおりで。外付無線LAN…

世田谷線にのって

引越しでジタバタ。断捨離したつもりでも、徹しきれなかったような。半年間の仮住まいは世田谷線沿線にある。これが楽しい。で、高田渡の名曲『自転車にのって』の替え歌を。 『世田谷線にのって』 世田谷線にのって 景色をながめカフェにいこか 古書店にい…

小林兼光が四谷シモンになるまで

人形作家 (中公文庫) 作者:四谷 シモン 中央公論新社 Amazon 昔書いたのシリーズ-part3 『人形作家』四谷シモン著を読む。 妻が作者の人形教室に通っていた。そこはカルチャースクールだったので、大半はリッチなおばさんだったのだが、中には場違いな少年少…

「身・心・社会の視点」から、「共同性」から、心の病を捉え直す

統合失調症 ――精神分裂病を解く (ちくま新書) 作者:森山公夫 筑摩書房 Amazon 25年間の断捨離。マジ、大変。コードレス電動ノコギリがクセになりそう。 昔書いたのシリーズ-part2 『統合失調症-精神分裂病を解く』森山公夫を読む。 2002年、「精神分裂…

IT革命がもたらすもの。デジタル時代に、哲学の<ものの見方>は機能するか

デジタルを哲学する―時代のテンポに翻弄される“私” (PHP新書) 作者:黒崎 政男 PHP研究所 Amazon 引越し準備で忙しいので昔書いたのを。 『デジタルを哲学する 時代のテンポに翻弄される<私>』黒崎政男著を読む。 「デジタル」と「哲学」、一見すると相反す…

掌(てのひら)の大宇宙―豪華絢爛な幻想的世界をご堪能あれ

須永朝彦小説選 (ちくま文庫) 作者:須永 朝彦 筑摩書房 Amazon 『須永朝彦小説選』須永朝彦著 山尾悠子編を読む。 名前は知っていた。塚本邦雄のお弟子で歌人や文藝評論家のような人と勝手に思っていた。小説も書いていたとは。 編者に惹かれて読んでみた。…

食品のリスクに対処する消費者の自覚の欠如が、BSEパニックの一因となった

食のリスクを問いなおす ――BSEパニックの真実 (ちくま新書) 作者:池田正行 筑摩書房 Amazon 引越しに備えて断捨離中。本もさることながら、コピーを書いた印刷物や企画書も山のようにある。粗大ごみも。 昔書いたレビューが出て来たので再掲。BSEを新…

知沸き、肉躍る―レムの著作では、読了スピード記録達成

インヴィンシブル 作者:スタニスワフ・レム 国書刊行会 Amazon 『インヴィンシブル』 スタニスワフ・レム著 関口時正訳を読む。新訳が良いからなのだろう、冒頭から吸い込まれ、ぼくもインヴィンシブル号に乗船していた。 消息を絶ったコンドル号を探しにイ…

ナイン・ストーリーズ―朝倉かすみがテーマを「スカート」に選定、指名した9人の作家

朝倉かすみリクエスト! スカートのアンソロジー 作者:朝倉 かすみ,北大路 公子,佐藤 亜紀,佐原 ひかり,高山 羽根子,津原 泰水,中島 京子,藤野 可織,吉川 トリコ 光文社 Amazon 『スカートのアンソロジー 朝倉かすみリクエスト! 』を読む。こんなアンソロジー…

「人類未来論」をテーマにしたアカデミックな書であって、SFチックな予言の書としても読める。ぼくは、後者の方

宇宙・肉体・悪魔【新版】――理性的精神の敵について 作者:J・D・バナール みすず書房 Amazon 『宇宙・肉体・悪魔-理性的精神の敵について-新版』J.D.バナール著 鎮目恭夫訳を読む。 「人類は、進化して人類となって以来つねに、そして現在もまた、次の3種…

国産みならぬ星産み。宇宙の生誕から滅亡まで描く物語

スターメイカー 作者:オラフ ステープルドン 国書刊行会 Amazon 『スターメイカー』オラフ・ステープルドン著 浜口 稔訳を読了。 ある夜、「ヒースの丘に腰を下ろして」いた主人公は、幽体離脱が起こり、宇宙を旅することとなる。 「本書の目的はわたしの冒…

地球消滅と人類滅亡までの、20億年に渡る18期の人類の興亡史を描いた(作品)。ふう~

最後にして最初の人類 作者:オラフ ステープルドン 国書刊行会 Amazon 一部でウワサのオラフ・ステープルドンの『最後にして最初の人類』が、なかなか前へ進まなかったが、ようやっと読了。 哲学者の書いたSF小説、とでもいえばいいのか。進まないけど、おも…

映画『マタンゴ』の原作『夜の声』などクラシカルな海洋怪奇小説短篇集

夜の声 (創元推理文庫) 作者:W・H・ホジスン 東京創元社 Amazon 『夜の声』W・H・ホジスン著 井辻朱美訳を読む。 船員体験をもとに小説を書いたというとメルヴィルがパイセンだが、作風はホジスンの方が怪奇によりフォーカスしているような気がする。単純に…

ガヴァネスはつらいよ。ガヴァネスも、か

ガヴァネス―ヴィクトリア時代の〈余った女〉たち 作者:川本 静子 みすず書房 Amazon 『ガヴァネス-ヴィクトリア時代の<余った女>たち-』川本静子著を読む。 『我は、おばさん』岡田育著に取り上げられていた本。 ヴィクトリア時代、19世紀の英国では「成…

ハン・ガンあたりの作品が好きな人なら、ぜひ。最後の一冊といわずに…

理系的 作者:増田みず子 田畑書店 Amazon 『理系的』増田みず子著を読む。20年ぶりに新作の『小説』を刊行した作者。これまで単行本未収録だったエッセイを編纂したのが、この本。 はじめに引用。 「私は生命の謎解きを求めて、はじめは生物学を学びました。…

記憶する体、体の記憶

記憶する体 作者:伊藤亜紗 春秋社 Amazon 『記憶する体』伊藤亜紗著を読む。 障害を持った人たちへのインタビューから「体の記憶」を探る。 障害を持って生まれた人と生まれてから障害を持った人。この本に出て来る11人は、みな個性的。何人かをピックアップ…

「むずかしいけど、魅力的」

生きていることの科学 生命・意識のマテリアル (講談社現代新書) 作者:郡司 ペギオ-幸夫 講談社 Amazon 誕生日祝いにもらったアイリッシュウイスキー「ジェムソン」をソーダ割りで。まさかのヤクルト優勝で、ちと飲み過ぎ。 『生きていることの科学』郡司ペ…

「レディ・アストロノート」、『火星へ』

火星へ 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者:メアリ ロビネット コワル 早川書房 Amazon 火星へ 下 (ハヤカワ文庫SF) 作者:メアリ ロビネット コワル 早川書房 Amazon 『火星へ』(上)(下) メアリ・ロビネット・コワル著 酒井昭伸訳を読む。 前作、『宇宙(そら)へ』では…