2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

負けるが勝ち

負ける建築 (岩波現代文庫) 作者:研吾, 隈 岩波書店 Amazon 『負ける建築』隈研吾著、読了。 いやあ、おもろかった。作者は『新・建築入門』を読んで、ぶっとんで、以来、建物、書き物、発言に注目している。 「勝ち誇る建築ではなく、地べたにはいつくばり…

どれも、これも、ふかイヤーな話―まさに、キング・オブ・コント(短編小説)

地獄の門 (白水Uブックス) 作者:モーリス・ルヴェル 白水社 Amazon 『地獄の門』モーリス・ルヴェル著 中川潤編訳を読む なべて人は成功譚や幸福な話よりも失敗談や不幸な話を聞きたがる。「他人の不幸は蜜の味」というが、この本は酸いも甘いもいろいろある…

きみをフィルムの中に幽閉したい

潤一郎ラビリンス〈11〉銀幕の彼方 (中公文庫) 作者:谷崎 潤一郎 中央公論新社 Amazon 『潤一郎ラビリンス〈11〉銀幕の彼方』 谷崎 潤一郎著 千葉 俊二 編集を読む。 『変格ミステリ傑作選【戦前篇】』竹本健治選で谷崎の『青塚氏の話』がおすすめの作品とし…

ホモ・エコノミクスについて考える

ホモ・エコノミクス ――「利己的人間」の思想史 (ちくま新書) 作者:重田 園江 筑摩書房 Amazon 『ホモ・エコノミクス-「利己的人間」の思想史-』重田園江著を読む。 ホモなんちゃらというと、「ホモ・ルーデンス」byホイジンガ、遊ぶ人の意。「ホモ・ファー…

アメリカの影、少女マンガの影

立ちどまらない少女たち: 〈少女マンガ〉的想像力のゆくえ 作者:大串尚代 松柏社 Amazon 『立ちどまらない少女たち-〈少女マンガ〉的想像力のゆくえ-』大串尚代著を読む。 2つの方向からざっくりと感想をば。 1.アメリカ文学が日本の少女マンガに与えたも…

元祖改造人間「蠅男」―「みなさん、気をおつけなさいまし」

蠅男 (名探偵帆村荘六の事件簿2) (創元推理文庫) 作者:海野 十三 東京創元社 Amazon 『蠅男 (名探偵帆村荘六の事件簿2)』 海野 十三著 日下 三蔵編を読む。著者は、 「早稲田大学理工科で電気工学を専攻。逓信省電務局電気試験所に勤務しながら、機関紙など…

弊機、探偵になる。何色の脳細胞?だが、しかし

逃亡テレメトリー マーダーボット・ダイアリー (創元SF文庫) 作者:マーサ・ウェルズ 東京創元社 Amazon 『逃亡テレメトリー マーダーボット・ダイアリー』マーサ・ウェルズ著 中原尚哉訳を読む。 『逃亡テレメトリー』 毎度おなじみ人型警備ユニット「弊機」…

老いることと枯れることはイコールじゃない

残光 作者:小島 信夫 新潮社 Amazon 『残光』小島信夫著を再読。 確か第三の新人に含まれている人で、安岡章太郎や庄野潤三あたりのユーモアにも通じるものがある。他に何作か読んだ。読んだとしても、たぶん、覚えてはいない。拙ブログを検索して確認する。…

ゆめゆめご用心 夢野ワールド

人間腸詰 夢野久作怪奇幻想傑作選 (角川ホラー文庫) 作者:夢野 久作 KADOKAWA Amazon 『人間腸詰―夢野久作怪奇幻想傑作選』を読む。 著者の代表作『ドグラ・マグラ』は、中途で頓挫した。そろそろ読んでもいい頃かな。で、まずは短編集で肩慣らし。この本は…

現代短歌のガイドブック

はつなつみずうみ分光器 after 2000 現代短歌クロニクル 作者:瀬戸 夏子 左右社 Amazon 『なつみずうみ分光器-after 2000現代短歌クロニクル-』瀬戸夏子著を読む。 短歌のすそ野が広がっているのは、なんとなく知っている。基本三十一文字の短歌…

或る不幸な少女

星の時 作者:クラリッセ・リスペクトル 河出書房新社 Amazon 『星の時』クラリッセ・リスペクトル著 福嶋伸洋訳を読む。 第八回日本翻訳大賞受賞作品。行きつけの図書館、半年待ちか、一年待ちか、ネット検索したら、ありゃりゃ、そんなことはなかった。ラッ…

ポストモダン・フェミニズム文学

彼女の体とその他の断片 作者:カルメン・マリア・マチャド エトセトラブックス Amazon 『彼女の体とその他の断片』カルメン・マリア・マチャド著 小澤英実訳 小澤身和子訳岸本佐知子訳 松田青子訳を読む。 クィア(奇妙な)味の短篇集。リチャード・ブローテ…

原始力で生きる

ぼくは始祖鳥になりたい (集英社文庫) 作者:宮内 勝典 集英社 Amazon 『ぼくは始祖鳥になりたい』宮内勝典著を読む。 本書には、宇宙の躍動感、地球の生命力、世界との一体感が溢れ出ている。ハイデガー流に述べるなら、世界-内-存在と世界-外-存在を同…

変格の「変」は変態の「変」変化球の「変」!?

竹本健治・選 変格ミステリ傑作選【戦前篇】 (行舟文庫 た 1-1) 作者:夏目 漱石,谷崎 潤一郎,芥川 龍之介,夢野 久作,甲賀 三郎,地味井 平造,渡辺 温,浜尾 四郎,江戸川 乱歩,海野 十三,小栗 虫太郎,木々 高太郎,川端 康成,横溝 正史,久生 十蘭,孫 了紅 行舟文…

『寝ながら学べる構造主義』を参考書にメタ言語を考えてみた

寝ながら学べる構造主義 (文春新書) 作者:内田 樹 文藝春秋 Amazon 知り合いのブログで「チョムスキーからオーウェルへ」というエントリーがあって、考えさせられるものがあった。メッセージを書き込もうとしたら、長くなりそうなんでレビューにしちまおうと…