2022-01-01から1年間の記事一覧
『男たちへ フツウの男をフツウでない男にするための54章』塩野七生著を読む。 時々無性に女の人から「クン」づけで呼ばれたくなる。駆け出しの頃は、女性のグラフィックデザイナーやコピーライター、スタイリストから「クン」づけでいろんな雑用を言いつ…
『とらすの子』芦花公園著を読む。ライター坂本美羽、中学生・川島希彦、女性警察官・白石瞳。3人の絡み合う不思議な縁で話はすすむ。 不可解な殺人事件が連続して起こる。snsで殺人事件の真相を知っているというミライと会うことになった三流オカルト雑誌の…
『風のくわるてつと』松本 隆著を読む。 嘘のような話だが、かつて、日本語ではロックは成立しない。というのが、まかり通っていた頃があった。その定説を覆したのが、何を隠そう、松本隆である。はっぴいえんどのドラマー兼作詞家から、アグネス・チャン、…
『金輪際』車谷長吉著を読む。 滅び行く私小説の継承者と目された直木賞作家の短編集。全7篇のテーマは、「ルサンチマン」(私怨)である。 本作の最初の作品「静かな家」を読んで、そのうまさに恐れ入り、こりゃ一気に読むのは勿体ないと思った。なかなか…
『Museum of Mom’s Art-探すのをやめたときに見つかるもの-』都築響一著を読む。というか見る。 いわゆる「おかんアート」の本。ふつうのお母さんやおばあさんが、そこらへんにあったひもやリボンを創意工夫して動物や人形をこしらえる。リ…
『自然 まだ見ぬ記憶へ』港千尋著を読む。 クローン羊ドリーが誕生してから、わずかな年月で本格的なヒト胚のクローニング研究に着手している。このES細胞は、あらゆる器官をつくる始原細胞、文字通り「ヒトの種子」として、新薬治療の開発から移植用臓器…
『陽だまりの果て』大濱普美子著を読む。 光ではなく翳。太陽ではなく月。若さではなく老い。日常の中の非日常。それは特異体験ではなく、誰もが経験する体験。現(うつつ)と夢、健常と非健常の区切りはきちんと線引きできるように思えるが、その境界は実は曖…
『日本一周ローカル線温泉旅』嵐山光三郎著を読む。 温泉へ行きたい。リゾートだの、ホテルだのは遠慮したいな。性に合わない。旅館がいい。かといって名旅館はごめんだ。肩が凝る。第一、路銭がはなはだ心もとない。心付なんか幾らすればいいのかわからない…
『世界は贈与でできている-資本主義の「すきま」を埋める倫理学-』近内悠太著を読む。「贈与」というと、マルセル・モースの贈与論やポトラッチあたりかなと思って読んだらハズレでした。 作者は贈与をこのように定義づけている。 「僕らが必要としている…
『お日さまお月さまお星さま』カート・ヴォネガット著 アイヴァン・チャマイエフ〔画〕著 浅倉久志訳を読む。 絵を手がけたアイヴァン・チャマイエフは、「モービル、MoMAなど世界の名だたるトレードマークのデザイン」で知られる。はじめに彼の絵がありき。…
『翻訳を産む文学、文学を産む翻訳-藤本和子、村上春樹、SF小説家と複数の訳者たち-』邵丹著を読む。 膨大な資料にあたり「翻訳」を考察している。ただ内容がカブっているところが結構あるので、なんとかうまく整理してレビューにしたいと思う。 作者が…
『幻滅-メディア戦記』((上)(下))バルザック著 鹿島 茂 編さん 野崎 歓 訳を読む。 出版社はひと山当てるために血眼になって新しい才能を探す。当たれば、豪遊、別荘、パトロンだってほいほい運転資金を融資してくれる。一方、ごまんといる小説家志望…
『タワー』ペ・ミョンフン著 斎藤真理子訳を読む。 舞台は674階建巨大タワーマンション「ビーンスターク」。『ジャックと豆の木』のあの一夜で天にまで伸びた豆の木に由来したネーミング。今様バベルの塔。しかも、そこは国家なのだ。タワマン国家。22階…
『これからの男の子たちへ-「男らしさ」から自由になるためのレッスン-』太田啓子著を読む。 漫画『巨人の星』の主人公・星飛雄馬は、子どものとき、父親から大リーグ養成ギブスを装着させられていた。幼児スパルタ教育、いまならDVの一環になりかねないが…
『ペール・ゴリオ パリ物語 バルザック「人間喜劇」セレクション (第1巻)』バルザック著 鹿島茂訳を読む。 なぜ、日本ではバルザックがポピュラリティーを得なかったのか。極論すれば、日本が物質的に貧しかったからだ。食べることに汲々としていては、やは…
『嘔吐-新訳-』ジャン‐ポール・サルトル著 鈴木道彦訳を読む。 大昔、白井浩司訳『嘔吐』を読んだのだが、もうすっかり忘れている。 最後まで読んだのだろうか。ぼく的にはカミュの『異邦人』のほうが、刺さったし、サルトルなら『存在と無』のほうに、惹…
『女のいない男たち』村上春樹著を読む。 はじめにアマゾンプライムビデオで濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』を見た。評判に違わぬできばえでぜひ原作が読みたくなった。作家の世界標準が村上春樹なら、いまや映画監督の世界標準が濱口竜介だとい…
またもや古い話なんだけど、新潟のある企業のリクルート向けVP(ビデオ)をつくることになって、構成と脚本を担当した。ロケハンからロケと冬の新潟に新幹線で何度か通った。スキーシーズンなのになあと早朝の上越新幹線、ガーラ湯沢あたりへ向う眠そうなスキ…
『文字禍・牛人』中島敦著を読む。 きっかけは、『言葉の魂の哲学』古田徹也著。 池澤夏樹の解説を読むと、漢学者の家系に生まれ、といっても祖父や父親から漢学を手ほどきされてはいないそうなのだが、まあ遺伝なんでしょうか。で、英語にも堪能だったと。 …
イリノイ遠景近景 (ちくま文庫 ふ-54-2) 作者:藤本 和子 筑摩書房 Amazon 『イリノイ遠景近景』藤本和子著を読む。 アメリカ・イリノイ州で暮らす作者がこれまで住んできた、訪ねたことのある土地での人たちについて書いたエッセイ集。ともかく作者の耳の良…
硫黄島―IWO JIMA 作者:黒川 創 朝日新聞社 Amazon 『硫黄島―IWO JIMA』黒川創著を読む。 硫黄島。「東京から1200キロ以上も太平洋を隔てている」島。「3000メートル級というジャンボ機が発着可能な滑走路が2本ある」基地の島。「太平洋戦争末期、二…
言葉の魂の哲学 (講談社選書メチエ) 作者:古田 徹也 講談社 Amazon 『言葉の魂の哲学』古田徹也著を読む。 ペーパーバックを読んでいて、はじめは意味がわからなかったのに、ある日突然、書いてあることがわかるようになったというエッセイを読んだことがあ…
太陽が死んだ日 作者:閻 連科 河出書房新社 Amazon 『太陽が死んだ日』閻連科著 泉京鹿訳 谷川毅訳を読む。 昼間、起きているときは、みな、何らかの法律や規範を守ったり、常識や社会的マナーに則て暮らしている。それはある意味抑圧されていることで、スト…
その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス) 作者:ジュンパ・ラヒリ 新潮社 Amazon 名作とウワサの高いジュンパ・ラヒリの『その名にちなんで』が、今週の通勤本。なるへそ。同じ作者の『停電の夜に』も、感心したが、この作品もかなりのもの。 「ゴーゴリ」…
徹夜の塊1 亡命文学論 増補改訂版 (徹夜の塊 1) 作者:沼野充義 作品社 Amazon 『亡命文学論 増補改訂版』沼野充義著を読む。 「亡命」というと亡命ロシア人がまっ先に浮かぶが。 「大量のロシア人亡命者の体験を通じて描き出された亡命文学の風景は、二十世…
『 寺田寅彦と現代―等身大の科学をもとめて 作者:池内 了 みすず書房 Amazon 『寺田寅彦と現代 等身大の科学を求めて』池内了著を読む。 寺田の著作は、岩波文庫から出ているものは、ほとんど読破した。そのたびに、新発見や再発見があり、文字通り目からウ…
アーモンドの木 (白水Uブックス) 作者:ウォルター・デ・ラ・メア 白水社 Amazon 『アーモンドの木』ウォルター・デ・ラ・メア著 和爾桃子訳を読む。 子どもが主人公。一見メルヘンチックでありながら、時には悲惨、時には幻想的、時にはゴーストチック。じゃ…
オーディション (幻冬舎文庫) 作者:村上 龍 幻冬舎 Amazon 『オーディション』村上龍著を読む。 村上龍がサイコホラーを書くとどうなるのか。 主人公・青山は、大手広告代理店から独立し、映像制作会社を経営している。妻に先立たれた彼は、息子のすすめもあ…
フェミニズムってなんですか? (文春新書) 作者:清水 晶子 文藝春秋 Amazon 『フェミニズムってなんですか?』清水晶子著を読む。 文字通りフェミニズムについて広く、深く、簡潔にまとめた本。最初に読むのはもちろん、なんか難解なフェミニズム本を読んで…
フラッシュバックス―ティモシー・リアリー自伝 ある時代の個人史および文化史 作者:ティモシー リアリー トレヴィル Amazon 『フラッシュバックス ティモシー・リアリー自伝』ティモシー・リアリー著 山形浩生・森本正史・久霧亜子・松原栄子・明石綾子訳を…