2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ケアで文学を批評する、あ、映画もね

世界文学をケアで読み解く 作者:小川 公代 朝日新聞出版 Amazon 『世界文学をケアで読み解く』小川公代著を読む。 これまでケアについて書かれた本が理論編だとすると、この本は展開編、応用編ってとこかな。作者は内外の作品(小説から映画まで)からケアマー…

「農業にも兵器にも使える技術」

戦争と農業(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル) 作者:藤原辰史 集英社 Amazon 『戦争と農業』藤原辰史著を読む。 『歴史の屑拾い』 藤原辰史著で著者が「戦時下、トラクターが戦車になった」という一文があって、もう少し深く知りたいと…

趣向を凝らした数々の短篇に酔いしれる

最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選 (海外文学セレクション) 作者:ジェフリー・フォード 東京創元社 Amazon 『最後の三角形』ジェフリー・フォード著 谷垣暁美編訳を読む。 幻想小説、SF小説、怪奇小説、それぞれの枠をくぐり抜け作者が自由自在に…

宇宙犬クローカとともに消えた宇宙飛行士イワン・イストチニコフ。実は…

スプートニク 作者:ジョアン フォンクベルタ 筑摩書房 Amazon 『スプートニク』スプートニク協会+ジョアン・フォンベルク 菅啓次郎訳を読む。 ソユーズ2号について知っている?では、イワン・イストチニコフはご存知かな?「知っている」と答えたあなたは、…

短命に終わったワイマル文化の全貌とは 

二十世紀思想渉猟 (岩波現代文庫) 作者:生松 敬三 岩波書店 Amazon 『二十世紀思想渉猟』生松敬三著を読む。 第一次世界大戦後のドイツ。ワイマル共和国が樹立する。時は1920年代。俗にいうところのワイマル文化が花開く。 カンディンスキー、グローピウ…

意味がないことに意味がある。ナンセンスには、センスが要る

ハルムスの世界 (白水Uブックス) 作者:ダニイル・ハルムス 白水社 Amazon 『ハルムスの世界』ダニイル・ハルムス著 増本浩子訳 ヴァレリー・グレチュコ訳を読む。 なんだかロシア文学を読むことが多い今日この頃。「ロシア文学」っていうと、暗い、重い、長…

流行は野火のように広がる

ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか 作者:マルコム グラッドウェル 飛鳥新社 Amazon 『ティッピング・ポイント いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』マルコム・グラッドウェル著 高橋 啓訳を…

脳のOSが異なるそうだ、大人と子どもは

子どもの脳が危ない (PHP新書) 作者:福島 章 PHP研究所 Amazon 『子どもの脳が危ない』福島章を読む。 残虐さを増す一方の少年犯罪など、未熟化、荒廃化する子どもの心、たぶん。子どもがキレる原因は親の躾(しつけ)や先生の指導に問題があるのではなく、…

おめでとうに、おめでとう

おめでとう(新潮文庫) 作者:川上弘美 新潮社 Amazon 『おめでとう』川上弘美著を読む。 困る、困る、実に、困る。作者の小説は、読む人を骨抜きにしてしまう。こんなにシンプルで、こんなにあっさりしていて、読んでいる最中は、ふんわかしていて、たちま…

おちこんだりもしたけれど、モスクワはげんきです

幸福なモスクワ (ロシア語文学のミノタウロスたち) 作者:アンドレイ・プラトーノフ 白水社 Amazon 『幸福なモスクワ』アンドレイ・プラトーノフ著 池田嘉郎訳を読む。 世界初の社会主義国家ソ連の象徴とも言うべき首都モスクワ。孤児の少女は、その都市にち…

バタイユ 1978 (5)

エロティシズム (ちくま学芸文庫) 作者:G・バタイユ 筑摩書房 Amazon 『内的体験』をぼくは1978年の夏に読んだ。大学の講義の最中に。図書館で。ジャズを聴きながら。コピーライターの学校の冷房の効きすぎた、だだっ広い部屋の中で。東北線の急行列車の中で…

バタイユ 1978 (4)

内的体験: 無神学大全 (河出文庫 ハ 4-5) 作者:ジョルジュ・バタイユ 河出書房新社 Amazon 笑い。バタイユは笑いを、エロティシズムと同じように消費とみなしている。『内的体験』の序文で次のように述べている。 「笑いの分析が、共有の厳密な主情的認識の…

屑拾いの視線で表の歴史が捨てたものを丹念に拾うこととは

歴史の屑拾い 作者:藤原辰史 講談社 Amazon 『歴史の屑拾い』 藤原辰史著を読む。 「歴史は、危機の時代の勝者や生存者によってしか描かれてこなかった。危機の時代の敗者や死者は、歴史を語る口を封じられる。しかし、戦争の勝者しか歴史を書けない、という…

言葉、言霊、拡散、9変化(へんげ)

祝福 作者:高原 英理 河出書房新社 Amazon 『祝福』高原英理著を読む。 『リング』や『らせん』では、呪いはビデオテープで伝播・感染したが、この作品ではリストカットをする少女がブログに書いた言葉。それが、なぜか、伝播して変化(へんげ)、拡散していく…

ソーシャルネットワーキングの科学―「弱い紐帯の強さ」

人脈づくりの科学: 「人と人との関係」に隠された力を探る 作者:安田 雪 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 Amazon 一寸興味があったので『人脈づくりの科学 「人と人との関係」に隠された力を探る』安田雪著を読む。 人脈づくりなんていうと、ほら、バ…

聞く耳をもて。これがなければ、話は通じない

なぜ「話」は通じないのか―コミュニケーションの不自由論 作者:仲正 昌樹 晶文社 Amazon 『なぜ「話」は通じないのか―コミュニケーションの不自由論』仲正昌樹を読む。 おおっ、こりゃ、正真正銘のバカの壁だ。つーか、バカの人垣とでもいうのか。 講演であ…