2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

足止めを食らった旅人たちへ

四分の一世界旅行記 作者:石川 宗生 東京創元社 Amazon 『四分の一世界旅行記』 石川宗生著を読む。 作者のことだから何か古い偽旅行記を読んでいるうちにその時代にタイムトラベルしてしまう、そんな奇想小説をイメージして読み始めた。あれれ、ガチ旅行記…

見えない壁、壁を壊しても新たにつくられる心の壁

「日本人」の境界―沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮 植民地支配から復帰運動まで 作者:小熊 英二 新曜社 Amazon 『<日本人>の境界―沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮 植民地支配から復帰運動まで。』小熊英二著を読む。作者の博士論文だったそうで、例によって部厚く、重た…

「分解の哲学」を分解する

分解の哲学――腐敗と発酵をめぐる思考 作者:藤原 辰史 青土社 Amazon 『分解の哲学 腐敗と発酵をめぐる思考』藤原辰史著を読む。 福岡ハカセの「動的平衡」を「分解の哲学」の端緒にして。 「生物学者の福岡伸一も、生命が「合成することよりも、分解すること…

「評価しないけど受け入れる」「嫌いだけれど共存する」―ロジャー・ウィリアムズに学ぶ

不寛容論: アメリカが生んだ「共存」の哲学 (新潮選書) 作者:森本 あんり 新潮社 Amazon 『不寛容論-アメリカが生んだ「共存」の哲学-』森本あんり著を読む。 イギリスから新天地アメリカへ渡ったピューリタンがアメリカを建国した。歴史の時間で学んだ。…

ハルヲファンはぜひ!ハルヲファンでない人も

調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝 作者:近田 春夫 リトル・モア Amazon 『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』を読む。70年の人生と半世紀にわたる音楽人生が書かれている。週末に一気読み。 とりとめのない感想を。 ぼくがはじめて彼を見たのは『ぎんざN…

人生のマウントを取る女

魂を漁る女 (中公文庫) 作者:レオポルド・フォン・ザッハー=マゾッホ 中央公論新社 Amazon 『魂を漁る女』レオポルド・フォン・ザッハー=マゾッホ著 藤川芳朗訳を読む。 青年士官ツェジム。その幼馴染のドラゴミラ。ツェジムは、久しぶりに会った彼女の美し…

不器用ですから。不器量ですから

事故係 生稲昇太の多感 (講談社文庫) 作者:首藤瓜於 講談社 Amazon 『事故係 生稲昇太の多感』首藤瓜於著を読む。 『脳男』で江戸川乱歩賞を受賞した作者の受賞後第一作。この受賞第一作というのは、とかく真価を問われるものらしいのだが。おどろおどろしい…

正統派のメールヘンと大人のメールヘンと

くるみ割り人形とねずみの王さま/ブランビラ王女 (光文社古典新訳文庫) 作者:ホフマン 光文社 Amazon 『くるみ割り人形とねずみの王さま/ブランビラ王女』E.T.A.ホフマン著 大島かおり訳を読む。 『くるみ割り人形とねずみの王さま』チャイコフスキーの『…

「B級エンタテイメントとしての推理小説のパロディ」少しは期待したのだが…

反復(新装版) 作者:アラン・ロブ=グリエ 白水社 Amazon アラン・ロブ=グリエの『反復』、読み終える。訳者の平岡篤頼があとがきでロブ=グリエと食わず嫌いせずに、深読みしたり、構えずに、ミステリー(ただしオチのない、謎解きのない)として読んでほしいと…

ネヴァーランドはマーダーランド

ティンカー・ベル殺し (創元クライム・クラブ) 作者:小林 泰三 東京創元社 Amazon 『ティンカー・ベル殺し』小林 泰三著を読む。 『ピーター・パン』と聞くと子ども向けミュージカルの定番コンテンツ。ディズニーのアニメ版に刷り込まれたぼくはピーター・パ…

コーランやイスラム教を知るには絶好の入門書

コーランを知っていますか (新潮文庫) 作者:阿刀田 高 新潮社 Amazon 『コーランを知っていますか』阿刀田高著をつらつらと読む。 作者が日本人にはなじみの薄い、というよりも名前は知っているけど、中身に関してはほとんど知られていないコーランを噛み砕…

美男VSブ男―花の色は 移りにけりな

美男の立身、ブ男の逆襲 (文春新書 (440)) 作者:大塚 ひかり 文藝春秋 Amazon 『美男の立身、ブ男の逆襲』大塚ひかり著を読了。 この手の論考を書かせたら、西の横綱が井上章一なら東の横綱が大塚ひかりだ。と、ぼくは個人的に思っている。この本ではついに…

ビバ!メヒコ 堀口大學、メキシコへ

SEMANA TRAGICA 悲劇週間 (文春文庫) 作者:矢作 俊彦 文藝春秋 Amazon 『悲劇週間―SEMANA TRAGICA』矢作俊彦著、読了。 『月下の一群』など、翻訳というよりも、原文である欧文を新しい日本語として書き換えた堀口大學。後の日本の作家に与えたインパクトを…

「エドガー・ポーを読む人は更にホフマンに遡らざるべからず」

黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ (光文社古典新訳文庫) 作者:ホフマン 光文社 Amazon 『黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ』E.T.A.ホフマン著 大島かおり訳を読む。 『黄金の壺』いやはや、これはまばゆいばかりの幻想的な世界が行間からダダ漏…

人を喰ったようなタイトルのクールなゾンビ・ミステリ―

わざわざゾンビを殺す人間なんていない。 作者:小林 泰三 一迅社 Amazon 『わざわざゾンビを殺す人間なんていない。』小林泰三著を読む。 ゾンビというと、ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』が浮かぶ。モノクロ画面で首を傾げ行…

ミス・マープルのデビュー作 13の短篇集

火曜クラブ (クリスティー文庫) 作者:アガサ・クリスティー,中村 妙子 早川書房 Amazon つらつらと読むアガサ・クリスティー短篇集。 『火曜クラブ』アガサ・クリスティー著 中村妙子訳を読む。 作者の作品ではエルキュール・ポアロと並んで人気のミス・マー…