正統派のメールヘンと大人のメールヘンと

 

 

くるみ割り人形とねずみの王さま/ブランビラ王女』E.T.A.ホフマン著 大島かおり訳を読む。

 

くるみ割り人形とねずみの王さま』
チャイコフスキーの『くるみ割り人形』の原作として知られるメールヘン。


クリスマスイブになるとシュタルバウム家の子どもたちは、ドロセルマイヤーおじさんの手作りのプレゼントを楽しみにしていました。上級裁判所顧問官のおじさんは見た目はカッコ悪いけど、手先が器用でなんでも作るのです。直すのも得意です。

 

娘のマリーはおじさんのお城のミニチュアよりもパパが送ってくれたくるみ割り人形が気に入りました。ところが、兄のフリッツが贈り物の軽騎兵の人形とともに手荒に扱って歯が欠けてしまいました。おじさんに大至急直してもらわないと。

 

寝静まった夜に現われたのはなんと7つの頭の大ねずみ。ねずみ軍の王様です。いざ、人形軍とねずみ軍の対決です。人形軍を率いるのはくるみ割り人形でした。一進一退の攻防。危うし人形軍、危うしくるみ割り人形。マリーは自分の靴を脱いでねずみの王様に投げました。

 

病床に伏せたマリー。枕元へねずみの王様がやって来てお菓子を渡さないとくるみ割り人形を噛み切ると脅します。くるみ割り人形は実はドロセルマイヤーおじさんの甥でした。悪い魔法でくるみ割り人形にされたのでした。夜、物音がしました。マリーはまたねずみの王様かと思ったら、くるみ割り人形でした。彼はマリーなどの励ましを力にねずみの王様を成敗したそうです。

 

お礼にマリーは人形の国へ招かれます。「氷砂糖の野原」など夢のようなおいしい楽しい世界が広がります。マリーのおかげで魔法の封印が解けて凛々しい若者に戻った甥のドロセルマイヤー。彼はマリーにプロポーズしました。二人は人形の国で幸せに暮らしましたとさ。

 

もし、あなたの家にくるみ割り人形があったら、王子様の仮の姿かもしれませんよ。 

 

『ブランビラ王女』
こっちはメールヘン調で書くのはムズい。「ジャック・カロ*風のカプリッチョ(狂騒曲)」という副題がついている。大人のメールヘンのようなものか。美貌のお針子ジアチンタに入れあげている役者ジーリオ。

 

『ブランビラ王女』とは誰か。ジアチンタなのだ。ジアチンタに求婚したアッシリアの王子コルネリオがジーリオ。一筋縄ではいかない話。途中、ジーリオはカピターノ・パンタローネと決闘して亡くなる。でも、同一人物であるはずのコルネリオはピンピンしている。劇なら役者の早変わりをみせる感じ。すれ違いとややこしさを味わうのだろう。

 

識名文喜の解説によるとオペラ化されているそうだ。文字で読むよりも舞台で見る方が案外混乱せずに楽しめるかも。何せホフマンは作家になる前は「作曲家、演出家」だったのだから。1人で何役もの登場人物を演じるのはコメディーではありがちな手法だが。華麗なるドタバタ喜劇。

 

*ジャック・カロ「ホフマンお気に入りの版画家・戯画家。グロテスクで滑稽な表象世界を演出するカロの手法はホフマンの創作原理に影響を与えている」識名文喜の解説より

 

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