2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

<存在>=<吐き気>=不条理性

『嘔吐-新訳-』ジャン‐ポール・サルトル著 鈴木道彦訳を読む。 大昔、白井浩司訳『嘔吐』を読んだのだが、もうすっかり忘れている。 最後まで読んだのだろうか。ぼく的にはカミュの『異邦人』のほうが、刺さったし、サルトルなら『存在と無』のほうに、惹…

映画を観てから原作へ。そこにあるチェーホフ的なもの

『女のいない男たち』村上春樹著を読む。 はじめにアマゾンプライムビデオで濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』を見た。評判に違わぬできばえでぜひ原作が読みたくなった。作家の世界標準が村上春樹なら、いまや映画監督の世界標準が濱口竜介だとい…

表から見たら裏は裏だけど、裏が表だったら表は裏になる

またもや古い話なんだけど、新潟のある企業のリクルート向けVP(ビデオ)をつくることになって、構成と脚本を担当した。ロケハンからロケと冬の新潟に新幹線で何度か通った。スキーシーズンなのになあと早朝の上越新幹線、ガーラ湯沢あたりへ向う眠そうなスキ…

異彩を放つ異才

『文字禍・牛人』中島敦著を読む。 きっかけは、『言葉の魂の哲学』古田徹也著。 池澤夏樹の解説を読むと、漢学者の家系に生まれ、といっても祖父や父親から漢学を手ほどきされてはいないそうなのだが、まあ遺伝なんでしょうか。で、英語にも堪能だったと。 …

耳がダンボになるひと。じゃあ、目は、どういえばいいんだろう

イリノイ遠景近景 (ちくま文庫 ふ-54-2) 作者:藤本 和子 筑摩書房 Amazon 『イリノイ遠景近景』藤本和子著を読む。 アメリカ・イリノイ州で暮らす作者がこれまで住んできた、訪ねたことのある土地での人たちについて書いたエッセイ集。ともかく作者の耳の良…

戦争の爪痕、孤島と孤独と孤立

硫黄島―IWO JIMA 作者:黒川 創 朝日新聞社 Amazon 『硫黄島―IWO JIMA』黒川創著を読む。 硫黄島。「東京から1200キロ以上も太平洋を隔てている」島。「3000メートル級というジャンボ機が発着可能な滑走路が2本ある」基地の島。「太平洋戦争末期、二…

「ゲシュタルト崩壊」「アスペクト(Aspekt)」<言葉を選び取る責任>

言葉の魂の哲学 (講談社選書メチエ) 作者:古田 徹也 講談社 Amazon 『言葉の魂の哲学』古田徹也著を読む。 ペーパーバックを読んでいて、はじめは意味がわからなかったのに、ある日突然、書いてあることがわかるようになったというエッセイを読んだことがあ…

みんな、夢の中―140文字では到底おさめきれない、おいらのつぶやき(tweet)

太陽が死んだ日 作者:閻 連科 河出書房新社 Amazon 『太陽が死んだ日』閻連科著 泉京鹿訳 谷川毅訳を読む。 昼間、起きているときは、みな、何らかの法律や規範を守ったり、常識や社会的マナーに則て暮らしている。それはある意味抑圧されていることで、スト…

漱石や鴎外と名づけられたら…

その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス) 作者:ジュンパ・ラヒリ 新潮社 Amazon 名作とウワサの高いジュンパ・ラヒリの『その名にちなんで』が、今週の通勤本。なるへそ。同じ作者の『停電の夜に』も、感心したが、この作品もかなりのもの。 「ゴーゴリ」…

「亡命文学論」沼は、底なし、底抜け

徹夜の塊1 亡命文学論 増補改訂版 (徹夜の塊 1) 作者:沼野充義 作品社 Amazon 『亡命文学論 増補改訂版』沼野充義著を読む。 「亡命」というと亡命ロシア人がまっ先に浮かぶが。 「大量のロシア人亡命者の体験を通じて描き出された亡命文学の風景は、二十世…

等身大の科学とは

『 寺田寅彦と現代―等身大の科学をもとめて 作者:池内 了 みすず書房 Amazon 『寺田寅彦と現代 等身大の科学を求めて』池内了著を読む。 寺田の著作は、岩波文庫から出ているものは、ほとんど読破した。そのたびに、新発見や再発見があり、文字通り目からウ…

ゆめのような うつつのような まぼろしのような

アーモンドの木 (白水Uブックス) 作者:ウォルター・デ・ラ・メア 白水社 Amazon 『アーモンドの木』ウォルター・デ・ラ・メア著 和爾桃子訳を読む。 子どもが主人公。一見メルヘンチックでありながら、時には悲惨、時には幻想的、時にはゴーストチック。じゃ…

あなただけを愛したい―その思いが

オーディション (幻冬舎文庫) 作者:村上 龍 幻冬舎 Amazon 『オーディション』村上龍著を読む。 村上龍がサイコホラーを書くとどうなるのか。 主人公・青山は、大手広告代理店から独立し、映像制作会社を経営している。妻に先立たれた彼は、息子のすすめもあ…

フェミニズム虎の巻

フェミニズムってなんですか? (文春新書) 作者:清水 晶子 文藝春秋 Amazon 『フェミニズムってなんですか?』清水晶子著を読む。 文字通りフェミニズムについて広く、深く、簡潔にまとめた本。最初に読むのはもちろん、なんか難解なフェミニズム本を読んで…

教授はいかにして、知覚の扉へターン・オンしたか

フラッシュバックス―ティモシー・リアリー自伝 ある時代の個人史および文化史 作者:ティモシー リアリー トレヴィル Amazon 『フラッシュバックス ティモシー・リアリー自伝』ティモシー・リアリー著 山形浩生・森本正史・久霧亜子・松原栄子・明石綾子訳を…