2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

進化もしくは新化するマンガ。さて、マンガ評論はどうだ?

テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ (星海社新書) 作者:伊藤 剛 星海社 Amazon 『テヅカイズデッド ひらかれたマンガ表現論へ』伊藤剛著を読む。 そういえば、山手線で高田馬場駅に到着すると、ホームから『鉄腕アトム』のジングルが流れる。か…

ロックンロール創世記、神話、叙事詩

ロックンロール七部作 作者:古川 日出男 集英社 Amazon 『ロックンロール七部作』古川日出男著を読む。 ワールドワイドなロックンロールの創世記、神話、叙事詩である。作者は村上春樹へのオマージュ本を出しているが、この本はひょっとして片岡義男の『ぼく…

クオリア学序説―「脳の中の1000億の神経細胞の活動から、クオリアに満ちた私たちの意識がどう生まれるか」

脳の中の小さな神々 作者:茂木 健一郎 柏書房 Amazon 『脳の中の小さな神々』 茂木 健一郎著 歌田 明弘 聞き手を読む。 相変わらず、脳ブームらしい。腸活の方がブームか。脳関連の本が多く刊行され、TVの特番などでも取り上げられることが多くて、脳研究も…

恨みはらさでおくべきか―お陀仏ホテル

大仏ホテルの幽霊 (エクス・リブリス) 作者:カン・ファギル 白水社 Amazon 『大仏ホテルの幽霊』 カン・ファギル著 小山内園子訳を読む。 『ニコラ幼稚園』という小説を書きあぐねていた作者。誰かが創作の邪魔をする。声がする。幼い時から、この声に悩まさ…

ヴィトゲンシュタイン・オタ 聖地巡礼へ

人生ミスっても自殺しないで、旅 作者:諸隈元 晶文社 Amazon 『人生ミスっても自殺しないで、旅』 諸隈 元著を読む。 ヴィトゲンシュタインを神のように崇める著者が、ヴィトゲンシュタインゆかりの国々をあてもなくさすらう旅。 その土地土地を訪ねてヴィト…

いまどきの子どもには、身体感覚が足りない

身体感覚を取り戻す 腰・ハラ文化の再生 (NHKブックス) 作者:斎藤 孝 NHK出版 Amazon 『身体感覚を取り戻す―腰・ハラ文化の再生』斎藤孝著を読む。 身体論というと、哲学を齧ったことのある人なら、メルロー・ポンティや市川浩をイメージされるだろう。本書…

司祭P、女人国「アマノン国」へ―

アマノン国往還記 (P+D BOOKS) 作者:由美子, 倉橋 小学館 Amazon 『アマノン国往還記』倉橋由美子著を読む。 『ガリバー旅行記』を本歌取りしたような作品を書いてみたいと思う作家は、かなりの数いるのではないだろうか。現在、国内・国外での大きな問題や…

まっとうな日本語のまっとうな小説

もののたはむれ (文春文庫) 作者:松浦 寿輝 文藝春秋 Amazon 『もののたはむれ』松浦寿輝著を読む。 対談集『存在の絶えられないサルサ』(何回見ても、醜悪なタイトルだが)の中で、村上龍と柄谷行人の対談している章だったと記憶している。そこで、「日本…

のんしゃらんでいこう

いつか王子駅で (新潮文庫) 作者:敏幸, 堀江 新潮社 Amazon 『いつか王子駅で』堀江敏幸著を読む。 エッセイのような不思議な味わいの小説だ。長い文章なのだが、軽やか。主人公は、講師をしたり、翻訳、大家の孫娘の家庭教師などをしながら、のんしゃらんな…

17人の銀幕の女優―銀幕は死語か

君美わしく―戦後日本映画女優讃 (文春文庫) 作者:川本 三郎 文藝春秋 Amazon 『君美しく 戦後日本映画女優讃』川本三郎著を読む。 東京オリンピック以前の東京。それは、二度と戻ることのできない昭和の東京の原風景がある。アメリカ人にとってベトナム戦争…

分かり合える?分かり合えない?分かり合いたい

この世界からは出ていくけれど 作者:キム チョヨプ 早川書房 Amazon 『この世界からは出ていくけれど』キム・チョヨプ著 カンバンファ訳 ユンジヨン訳を読む。 意思の疎通の難しさ、マイノリティ(社会的少数者)の生きにくさや哀しさなどをテーマにした、やさ…

赤ちゃんは、おっぱい帝国主義者

ふにゅう 作者:川端 裕人 新潮社 Amazon 『ふにゅう』川端裕人著を読む。 『ふにゅう』といっても中華料理のあのクサい「腐乳」じゃない、「母乳」に対する「父乳」。 この本には、いまどきのいろんな夫婦が出て来る。男女雇用機会均等法ではないが、男女育…

まさか!著者死後60年に発見された未完の小説

戦争 (ルリユール叢書) 作者:ルイ゠フェルディナン・セリーヌ 幻戯書房 Amazon 『戦争』ルイ=フェルディナン・セリーヌ著 森澤友一朗訳を読む。 その昔、セリーヌ著 生田耕作訳の『夜の果てへの旅』を読んで、痺れた。書名が『夜の果ての旅』だったはず。第…

ジジェクが目にしみる―誤読のすすめ

身体なき器官 作者:スラヴォイ・ジジェク 河出書房新社 Amazon 『身体なき器官 』スラヴォイ・ジジェク著 長原 豊訳を読む。 いままでいろいろ読んできたジジェク本の中で、ぼくには、いちばんポップで、軽いように思える(ジジェク本比)。標題はご存知、思想…

「謝罪」を哲学する

謝罪論 謝るとは何をすることなのか 作者:古田 徹也 柏書房 Amazon 『謝罪論 謝るとは何をすることなのか』古田徹也著を読む。 たとえば企業が問題を起こしたとき、経営陣が一同で謝罪する。TVのニュースでおなじみのシーン。ただ謝るだけでは、説明不足、謝…

さよならは、別れの言葉じゃなくって

川島雄三、サヨナラだけが人生だ 作者:藤本 義一 河出書房新社 Amazon 『川島雄三、サヨナラだけが人生だ』藤本義一著を読む。 いまや伝説の映画監督となった川島雄三のもと、シナリオライターの卵、というかアシスタントとして作者は弟子入りする。男が男に…

完全お気楽人生マニュアル―生きづらさを覚えているあなた、生き方ベタなあなたへ

人間関係を半分降りる ――気楽なつながりの作り方 作者:鶴見済 筑摩書房 Amazon 『人間関係を半分降りる-気楽なつながりの作り方-』鶴見済著を読む。 人は一人では生きられないといわれる。確かに、そう思う。でも、隣近所や友人、親兄弟、会社の上司・同僚…

「天井裏妄想」を読み解く

屋根裏に誰かいるんですよ。 都市伝説の精神病理 (河出文庫) 作者:春日武彦 河出書房新社 Amazon 『屋根裏に誰かいるんですよ。-都市伝説の精神病理-』春日武彦著を読む。 まず、江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』からはじまる。他人の私生活をこっそり覗き…