司祭P、女人国「アマノン国」へ―

 

 

『アマノン国往還記』倉橋由美子著を読む。

 

ガリバー旅行記』を本歌取りしたような作品を書いてみたいと思う作家は、かなりの数いるのではないだろうか。現在、国内・国外での大きな問題や課題を、ダイレクトに書くのではなく、あくまでも虚構の世界でそこに思いや主張を登場人物たちに黒子として行動や語りで代弁させる。

 

いわゆる女護ヶ島、女人国、アマゾネス伝説は、古来、幻想、SF、ポルノなどさまざまな小説の題材となっていた。本作もその一冊。

 

女性がすべてを牛耳っている地下国家「アマノン国」。長い間、鎖国をしている。やっとの思いで到着したのが、司祭P。彼はモノカミ教団の支配下にある世界から布教を目的に派遣された。かの国に着くことができたのは、彼のみだった。

 

この国での生殖は「精子バンクから精子の提供を受け、自分の卵子と人工授精、人工子宮で約十か月間妊娠状態に置く。誕生後は、人工哺育装置で育てる。育児や教育はサービス会社に任せて母親は働いている」何せ男がいないのだから。女性が100%社会進出している。


アマノン国にいるわずかな男性は去勢され、「ラオタン」と呼ばれている。中国でいうところの宦官だ。

 

Pのミッションは、ズバリ、「オッス革命」(なんつーネーミング)。男性と女性のセックスの復活、それによる妊娠・出産の復活、男性の復活、復権

 

国賓扱いされた彼は、アマノン国の古都キオト、首都トキオに招かれる。Pから見た都市の様子やおもてなし料理などの描写は、異国情緒にあふれている。

 

Pのまわりにはロリータちゃんのヒメコやアダルトな魅力の首相・ユミコスなどさまざまなタイプの美女揃い。中には、フェリーニの映画に出てきそうな超肥満体の女性も出て来るが。


TVの「宗教番組「モノパラ」」で彼はレギュラーとなる、中身は、毎回、Pと異なる女性とのベッドインを生中継するというもの。

 

彼は、「オッス革命」を成功させるために、相手を選ばず、性交に邁進する。ジェームズ・ボンド並みにモテる。恐ろしい「タナトミン(シニコス博士によって開発された自殺誘発剤)」が、ユミコスには媚薬になったり。


男性を知らなかった女性が、Pとの性行為によって男性に目覚めていく。これはフェミニズムの立場から見ると、どうなのかとも思うが、そこはシャレで。艶笑譚と理解して。

 

「付録・アマノン語辞典」が楽しい。いやいや、このセンス。この毒。古くなったものもあるが、笑える。思った以上にエロティック、思った以上にエンタメ系だった。

 

村田紗耶香の『消滅世界』の先駆けか。あるいは、よしながふみの『大奥』を思わせる。ぼくは漫画ではなくNHKのドラマで見ていたが。

 

司祭PのPは、後年、松浦 理英子の『親指Pの修業時代』に継承された、たぶん。

 

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