2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

失われし作家を求めて

人類の深奥に秘められた記憶 (集英社文芸単行本) 作者:モアメド・ムブガル・サール 集英社 Amazon 『人類の深奥に秘められた記憶』モアメド・ムブガル・サール著 野崎 歓訳を読む。 引用と剽窃、パクリは紙一重。素晴らしい作品とてパクリ疑惑がかけられれば…

暴力には「肯定的に見るべき暴力が、間違いなく存在する」

死なないための暴力論 (インターナショナル新書) 作者:森 元斎 集英社インターナショナル Amazon 『死なないための暴力論』森元斎著を読む。 暴力はいけない。「暴力反対」と決まり文句のように言われているが。はてさて、「暴力反対」とはなんだろう。どん…

面白いところもあるし、そうでないところもある。ためになるところもあるし、そうでないところもある。ピンとくるところもあるし、そうでないところもある

嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス) 作者:北田 暁大 NHK出版 Amazon 仕方なく鼻炎のカプセルを飲んで横になりながら『嗤う日本の「ナショナリズム」』北田暁大著を読む。 面白いところもあるし、そうでないところもある。ためになるところもあるし…

ゴシック・ビルドゥングス・ロマン―ヴィクトリア・マッキャンドレスの生涯

哀れなるものたち (ハヤカワepi文庫) 作者:アラスター グレイ 早川書房 Amazon 『哀れなるものたち』 アラスター・グレイ著 高橋 和久訳を読む。 映画版『哀れなるものたち』(ヨルゴス・ランティモス監督、エマ・ストーン主演)を見てから、原作本を読む。 …

いつだってもっと単純に生きられたら

単純な生活 (P+D BOOKS) 作者:阿部 昭 小学館 Amazon 『単純な生活』阿部昭著を読む。 いつか機会があったらこの本を取り上げてみたいと思っていた。小説が大量生産・大量消費される風潮が強い昨今、再読する本が書棚にある人は幸せだ。ぼくの場合は本書がそ…

父、母、息子、三つ巴の殺意―中華家族ノワール小説

中国のはなし: ――田舎町で聞いたこと 作者:閻 連科 河出書房新社 Amazon 『中国のはなし-田舎町で聞いたこと』 閻連科著 飯塚容訳を読む。 作者が母の誕生日のパーティーのため、郷里に帰る。宴が終わった後、とある若者が作者に自分の家族の隠された話を囁…

ほっこり、ドッキリ、ざわざわ、にんまり

お城の人々 作者:ジョーン・エイキン 東京創元社 Amazon 『お城の人々』ジョーン・エイキン著 三辺 律子訳を読む。 メルヘンのような、怪談のような、SFのような…。異なるいろんなテイストが楽しめる10の短篇奇譚集。1日1篇ずつ読んでは、「なるほど」とか、…

生き方としてのインターネット。その光と影

ネクスト 作者:マイケル ルイス アスペクト Amazon 『ネクスト』マイケル・ルイス著 熊谷千寿訳を読む。 インターネットではプロもアマもない。大人も子どももない。男と女もない。阪本啓一氏の著作『パーミション・マーケティングの未来』からの言説を付加…

1960年代の「死の家の記録」

穴持たずども (ロシア語文学のミノタウロスたち) 作者:ユーリー・マムレーエフ 白水社 Amazon 『穴持たずども』ユーリー・マムレーエフ著 松下 隆志訳を読む。 まずは、チモフェイ・レシェトフの解説から、この作品が書かれた時代背景を引用。 「スターリン…

クラシックな文学の香り、漂う、怖い話

ゴースト・ストーリー傑作選――英米女性作家8短篇 作者:川本静子・佐藤宏子 みすず書房 Amazon 『ゴースト・ストーリー傑作選 英米女性作家8短篇』川本静子・佐藤宏子編訳を読む。 「19世紀半ばから20世紀初頭」ブームとなったゴースト・ストーリー。訳者あと…

気分は『フィネガンズ・ウエイク』を読んだダブリン市民

エセ物語 (対抗言論叢書 3) 作者:室井 光広 法政大学出版局 Amazon 『エセ物語』室井光広著を、やっとこさ、読む。 作者、最後の未完の長篇小説。すごいと思う。面白いとは思う。しかし、しかし、ちゃっちゃとは読めない。とにかく時間をかけて読み進める。…

『きみの友だち』or『君の友だち(You've Got a Friend)』

きみの友だち(新潮文庫) 作者:重松 清 新潮社 Amazon 子どもが読みたくて近所の書店を数件回っても見つからなかった重松清著の『きみの友だち』。妻がamazonで頼んだら、翌日には届いた。町の小さな書店はかなわないわけだ。あっという間に読んでしまった…

ユーモラスな無頼派―木山捷平伝

木山さん、捷平さん 作者:岩阪 恵子 新潮社 Amazon 『木山さん、捷平さん』岩阪恵子著を読む。閉めていた日本文学の引き出しを久しぶりに開けさせられた。 評伝を書くために作者は資料を漁る。木山にゆかりのある土地を訪ねる。そうこうしているうちに、作者…

境界域は文明の揺りかご

文明の交流史観: 日本文明のなかの世界文明 (MINERVA歴史・文化ライブラリー 8) 作者:小林 道憲 ミネルヴァ書房 Amazon 『文明の交流史観―日本文明のなかの世界文明』小林道憲著を読む。以下メモ。 ○梅棹忠夫の『文明の生態史観』批判 文明とはそれぞれが独…

天才哲学者の傲慢とか自信のなさとか覗き読み

ウィトゲンシュタイン 哲学宗教日記 作者:ル-トヴィッヒ・ウィトゲンシュタイン 講談社 Amazon 『ウィトゲンシュタイン哲学宗教日記―1930‐1932/1936‐1937』(すごい邦訳)イルゾ・ゾマヴィラ編 鬼界彰夫訳を、少しずつ読んでいる。少しずつしか読めないんだけ…

日本とドイツ、同じ敗戦国でありながら異なる道へ

日本とドイツ 二つの戦後思想 (光文社新書) 作者:仲正 昌樹 光文社 Amazon 『日本とドイツ 二つの戦後思想』仲正昌樹を読む。 敗戦国である両国が戦後から現在までどのような思想の変遷があったかを明瞭にまとめてある。いわば、思索の交通整理的本。作者の…

アマゾンの物流センターのルポを読んで『蟹工船』を思い出した

アマゾン・ドット・コムの光と影 作者:横田増生 情報センター出版局 Amazon そういえばアマゾンの物流センターに潜り込んで本を書いた人がいたことを思い出した。それが、この本、『潜入ルポ アマゾンドットコムの光と影―躍進するIT企業・階層化する労働現場…