2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ぼくの好きな漫画家

ずっと先の話 (ヤングマガジンコミックス) 作者:望月峯太郎 講談社 Amazon 『ずっと先の話』望月峯太郎著を読む。 本作は著者初の短篇集だ。いちばん古いのが1988年で、いちばん最近のが2001年まで。ただし、収録の際、「加筆・修正・着色」を施して…

インカ帝国がスペイン帝国を征服したら…

文明交錯 (海外文学セレクション) 作者:ローラン・ビネ 東京創元社 Amazon 『文明交錯』ローラン・ビネ著 橘明美訳を読む。 ジャレド・ダイアモンド著の名著『銃・病原菌・鉄』では、インカ帝国は「鉄、銃、馬、そして病原菌に対する免疫」がなかったから、…

テクスト論者のテクスト知らず

テクストから遠く離れて (講談社文芸文庫) 作者:加藤 典洋 講談社 Amazon いまさらながら加藤典洋の『テクストから遠く離れて』を読みだす。こちらも噂、いやそれ以上におもしろい。 とかく人は、思想、文学、音楽など新しいものをありがたがるが、ほんと、…

ぼけとケアと利他

ぼけと利他 作者:伊藤亜紗,村瀨孝生 ミシマ社 Amazon 『ぼけと利他』伊藤亜紗著 村瀬孝生著を読む。 「美学と現代アート」が専門の(そうだったんだ!)東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長と「宅老所よりあい」代表による往復書簡集。二人…

ある夜の出来事

あやめ 鰈 ひかがみ (講談社文庫) 作者:松浦 寿輝 講談社 Amazon 『あやめ鰈ひかがみ』松浦寿輝著を読む。 一夜に偶然、うっすらと関わりあった三人の男の物語。こんな構成の映画を見たことがあると思ったら、そうだった、ジム・ジャームッシュの『ナイト・…

ショートショートだが読み心地はロングロング

長くて短い一年 ――山川方夫ショートショート集成 (ちくま文庫 や-61-2) 作者:山川 方夫 筑摩書房 Amazon 『長くて短い一年-山川方夫ショートショート集成-』山川方夫著 日下三蔵編を読む。そっか、これって、山川方夫のショートショート集成の第2弾だった…

作者曰く「SFの醍醐味とは、パスティーシュではないか」と

ガーンズバック変換 作者:陸 秋槎 早川書房 Amazon 『ガーンズバック変換』陸秋槎著 阿井幸作訳 稲村文吾訳 大久保洋子訳を読む。 いわゆる華文ミステリの作者がSFにトライ。パスティーシュ、オマージュ、パク〇、引用などなどさまざまな隠し味が効いている…

幻想的で、前衛性の高い初期短篇集

水晶幻想/禽獣 (講談社文芸文庫) 作者:川端 康成 講談社 Amazon 『水晶幻想・禽獣』川端康成著を読む。 『掌の小説』川端康成著、吉村貞司の解説から引用。 「ボオドレエル、マラルメ、ヴェルレーヌなどに畏敬されたヴィリエ・ド・リラダンは、きわめて鋭角…

はじめのバタイユ はじめてのバタイユ はじめてでなくてもいいけど

はじまりのバタイユ: 贈与・共同体・アナキズム 法政大学出版局 Amazon 『はじまりのバタイユ 贈与・共同体・アナキズム』 澤田直編 岩野卓司編 を読む。 「七つの顔を持つ男」は、多羅尾坂内。映画では片岡千恵蔵が変装してさまざな人になりすますが、いか…

やさしい公園

ベンチで横になって熟睡すると15分後、低周波電流が流れます すべり台は思わぬケガをしないようすべらない台になっています ブランコは固定してあるのでお年寄りも安心して漕げます 漕げないけど 禁止のスケートボードをすると落とし穴が作動します ホームレ…

「20歳代の」本邦初訳のレムの作品集

火星からの来訪者: 知られざるレム初期作品集 (スタニスワフ・レム・コレクション) 作者:スタニスワフ・レム 国書刊行会 Amazon 『火星からの来訪者-知られざるレム初期作品集-』スタニスワフ・レム著 沼野充義訳 芝田文乃訳 木原槙子訳を読む。 作家のデ…

転がる石のように……

イッツ・オンリー・トーク 作者:絲山秋子 文藝春秋 Amazon 絲山秋子著『イッツ・オンリー・トーク』を作者の筆力につられてぐいぐい読んだ。 『イッツ・オンリー・トーク』 女性の主人公が実にさっぱりしている。男前というといろいろクレームがつきそうな今…

ホームドラマの定点観測

カンバセイション・ピース (河出文庫) 作者:保坂 和志 河出書房新社 Amazon 『カンバセイション・ピース』保坂和志著を再読する。いや、もっと読み直しているな。 「猫」「鎌倉の家」「大家族(正しくは親族か)」「横浜ベイスターズ」。雑駁に述べてしまえば…

飢えたインテリゲンチャの前で豆は有効か。有効だ

四書 作者:閻 連科 岩波書店 Amazon 『四書』閻連科著 桑島道夫訳を読む。 黄河の周辺にある第九十九更生区がこの小説の舞台。『天の子』『旧河道』『罪人録』『新シューポスの神話』の「四つの書」から成る。登場人物は「作家」「音楽」「宗教」など職業名…

デカルトと人形愛

ユークリッドの窓: 平行線から超空間にいたる幾何学の物語 (ちくま学芸文庫) 作者:レナード ムロディナウ 筑摩書房 Amazon 『ユークリッドの窓 平行線から超空間にいたる幾何学の物語』レナード・ムロディナウ著 青木 薫訳をつらつら読む。 小説が続くと、カ…