2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「踊る熊」はかわいい?かわいそう?

踊る熊たち:冷戦後の体制転換にもがく人々 作者:ヴィトルト・シャブウォフスキ 発売日: 2021/02/27 メディア: 単行本 『踊る熊たち 冷戦後の体制転換にもがく人々』ヴィトルト・シャブウォフスキ著 芝田 文乃訳を読む。 「踊る熊」はブルガリアのロマの伝統…

ウィーンに果つ

ウィーン近郊 作者:黒川創 発売日: 2021/02/25 メディア: Kindle版 『ウィーン近郊』黒川創著を読む。 イラストレーター・西山奈緒は兄優介がウィーンで自死した連絡を受ける。兄は長いウィーン暮しに別れを告げ、日本に帰ることになっていた。直前まで連絡…

いつか読んだ光景

わたしたちが光の速さで進めないなら 作者:キム チョヨプ 発売日: 2020/12/03 メディア: Kindle版 『わたしたちが光の速さで進めないなら』 キム・チョヨプ著 カン・バンファ訳 ユン・ジヨン訳を読む。 まず、タイトルがいいよね。 静かで哀しくて最先端の科…

罪とか罰とか―貧困をすべてのせいにはしたくはないが

終身刑の女 (小学館文庫 ク 8-1) 作者:レイチェル・クシュナー 発売日: 2021/02/05 メディア: 文庫 『終身刑の女』レイチェル・クシュナー著 池田 真紀子訳を読む。 ロミ―・ホールは、ストリップ・クラブ「マーズ・ルーム」のダンサー。シングル・マザーでも…

ビジネスから恋愛まで、ゲーム理論で勝ち抜こう

戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する (中公新書) 作者:梶井 厚志 発売日: 2002/09/01 メディア: 新書 『戦略的思考の技術 ゲーム理論を実践する』梶井厚志著を読む。 最近よく耳にする言葉の1つが「ゲーム理論」である。これは「ゲーム攻略の理論」ではな…

復讐するは我にあり―無駄死にした人々へのレクイエム

バグダードのフランケンシュタイン (集英社文芸単行本) 作者:アフマド・サアダーウィー 発売日: 2020/12/16 メディア: Kindle版 『バグダードのフランケンシュタイン』アフマド・サアダーウィー著 柳谷 あゆみ訳を読む。 毎日のように自爆テロ事件が起こるイ…

言語の原形質とは

皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則 作者:ロジャー ペンローズ 発売日: 1994/12/20 メディア: 単行本 『『皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則』ロジャー・ペンローズ著 林一訳を読んだ。 「コンピュータとAI」をテーマにした大著だが、ムズ…

ユートピアとディストピアは紙一重

ユートロニカのこちら側 (ハヤカワ文庫JA) 作者:小川 哲 発売日: 2017/12/28 メディア: Kindle版 『ユートロニカのこちら側 』小川哲著を読む。 過度なストレスは万病の素だが、ほど良いストレスは長生きの素だそうだ。 「週休3日制」が騒がれているが、もし…

サヴァイバルのためのストラテジー

ヘッピリムシの屁―動植物の化学戦略 作者:ウイリアム アゴスタ メディア: 単行本 今日は過去レビューから。 『ヘッピリムシの屁 動植物の化学戦略』ウィリアム・アゴスタ著 長野 敬他訳を読む。 ジャングルを伐採することになぜ反対するのか。それは、ジャン…

「ミステリ―の女王」が書く「怪奇・幻想」短篇小説

死の猟犬 (クリスティー文庫) 作者:アガサ・クリスティー,小倉 多加志 発売日: 2012/08/01 メディア: Kindle版 寒暖差にやられて不調気味だった。熱はないようだ。葛根湯をのんでひたすら眠る。 『死の猟犬』アガサ・クリスティー著 小倉多加志訳を読む。ア…

幻のミステリ作家

幻の女 ――ミステリ短篇傑作選 (ちくま文庫) 作者:田中 小実昌 発売日: 2021/01/09 メディア: 文庫 『幻の女』田中小実昌著 日下三蔵編を読む。 レイモンド・チャンドラーやカーター・ブラウンの作品の名翻訳家だったことを知る前に『平凡パンチ』に載ってい…

最初の『ピアノ教師の生徒』で吸い寄せられる

ラスト・ストーリーズ 作者:トレヴァー,ウィリアム 発売日: 2020/08/09 メディア: 単行本 『ラスト・ストーリーズ』ウィリアム・トレヴァー著 栩木伸明訳を読む。 タイトル通り最後の短篇集。「短篇小説の名手」とは聞いていたが、読むのははじめて。最初の…

チェーホフの『サハリン島』を読もう、読もうと思っていたのに、 違う『サハリン島』を読んでしまった

サハリン島 作者:エドゥアルド・ヴェルキン 発売日: 2020/12/22 メディア: 単行本 『サハリン島』エドゥアルド・ヴェルキン著 北川和美訳 毛利公美訳を読んだ。 核戦争が勃発して鎖国政策をとった日本だけが生き残る。日本は大日本帝国となって世界を制覇す…

おそれイタリアした―名作、怪作、珍作…思った以上に楽しめた

19世紀イタリア怪奇幻想短篇集 (光文社古典新訳文庫) 発売日: 2021/01/12 メディア: 文庫 『19世紀イタリア怪奇幻想短篇集』橋本勝雄編・訳を読む。 編・訳者解説によると、19世紀イタリアはイギリスやドイツに比べて「幻想小説」が盛んではなかったそうだ。…

「肥満男子(ファット・ボーイズ)」とは、どんなシンボルなのか

肥満男子の身体表象: アウグスティヌスからベーブ・ルースまで (叢書・ウニベルシタス) 作者:ギルマン,サンダー・L. 発売日: 2020/09/28 メディア: 単行本 『肥満男子の身体表象: アウグスティヌスからベーブ・ルースまで』 サンダー・L. ギルマン著 小川 公…