2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「健全な懐疑主義はむしろ今の社会を生きていくために必要なスキルではないだろうか」

疑似科学と科学の哲学 作者:伊勢田 哲治 名古屋大学出版会 Amazon 『疑似科学と科学の哲学』伊勢田哲治著を読む。 「悲観的帰納法」が気に入ったので引用。 「非常にうまくいっていた理論1は偽であることが判明した 非常にうまくいっていた理論2は偽であるこ…

黒歴史を明かしてはいけない

その謎を解いてはいけない 作者:大滝 瓶太 実業之日本社 Amazon 『その謎を解いてはいけない』大滝瓶太著を読む。 主人公は名(迷)探偵・暗黒院真実と押しかけ助手の女子高生・小鳥遊唯。実は、作家でもある。二人が次々と起きる不可解な殺人事件に挑む。 ラ…

三人寄れば毒が生まれる。それは、なぜ?

サークル有害論 なぜ小集団は毒されるのか (集英社新書) 作者:荒木優太 集英社 Amazon 『サークル有害論-なぜ小集団は毒されるのか-』荒木優太著を読む。 そも「サークル」は「ロシアに由来する小集団」のことだそうだ。知らなんだ。 「三人寄れば文殊の知…

『君たちはどう生きるか』を見た

宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』を見た。久しぶりの映画館。 見た人の評価はsnsなどでは賛否両論。ネタバレしないでこの作品の魅力を伝えるのは多少骨かも。 一言でいうなら、私小説というカテゴリーがあるが、私アニメーション。しかし、そこには過剰な…

変わり続けた晩熟の哲学者

ホワイトヘッド―有機体の哲学 (現代思想の冒険者たち) 作者:田中 裕 講談社 Amazon 『ホワイトヘッド-有機体の哲学- (現代思想の冒険者たち)』 田中裕著を読む。 名前は知っていたが、詳しいことは知らない。なんで、入門書としてこの本をチョイス。 「ケ…

粘菌、因縁、南方曼荼羅

南方熊楠 地球志向の比較学 (講談社学術文庫) 作者:鶴見 和子 講談社 Amazon 『創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク』の序章で粘菌の話が出て来る。きわめて興味深い事例なのだが、その前に、粘菌といえば、どうしても知の巨人南方熊楠…

ブランドは、守るだけではなく、差異化するだけでもなく

ブランドのデザイン 作者:川島 蓉子 弘文堂 Amazon 昨夜と今日の午前中で『ブランドのデザイン』川島蓉子著を読む。 たまには、本業関係の本も紹介しないと。きれいなブックデザインにひかれた。 サントリー「伊右衛門」「ウーロン茶」、キユーピーマヨネー…

どこかにありそうで、「どこにもない場所」を書く、読む

猫の木のある庭 (河出文庫) 作者:大濱 普美子 河出書房新社 Amazon 『猫の木のある庭』大濱普美子著を読む。 西洋の怪談では幽霊やお化けは古城や貴族の古い館や別荘、教会など住まいに憑くといわれる。住まいの主が変わる度、小規模、大規模の改修、リフォ…

挫折の美学―真の密告者は誰なのか

『密告』 密告 作者:真保 裕一 講談社 Amazon 『密告』神保裕一著著を読む。 主人公萱野は、高校時代はラガーとして花園に出場したことがあった。しかし、故障により、大学の推薦枠から外れてしまう。そこで挫折を味わう。大学進学を断念して警察官となるが…

アンダーグラウンドの人々、シシュフォスの石の如き

土台穴 (文学の冒険シリーズ) 作者:アンドレイ プラトーノフ 国書刊行会 Amazon 『土台穴』アンドレイ・プラトーノフ著 亀山郁夫訳を読む。 機械工場で働いていたヴォーシェフは、突然、解雇を言い渡される。工員には、機械さながら始業から就業まで自分の持…

伍長から独裁者へ、妻から帝国の元首へ

妻の帝国 作者:佐藤哲也 Amazon 『妻の帝国』佐藤哲也著を読む。 妻が実は魔女だったというアメリカのTV人気コメディーがあったが、こっちは妻がほんとうは帝国の元首だったというお話。 朝な夕な妻は莫大な枚数の指示書をワープロで打ち-後に夫のパソコ…

「人工選択淘汰の時代」とは

情報エネルギー化社会―現実空間の解体と速度が作り出す空間 作者:ポール ヴィリリオ 新評論 Amazon 定期健診で午前中がつぶれる。 『情報エネルギー化社会―現実空間の解体と速度が作り出す空間』ポール・ヴィリリオ著 土屋進訳を読む。 断片集というのか、短…

すぐ読める、でも、すごく深い

ありふれた金庫 (ネコノス文庫 キ 1-1) 作者:北野勇作 ネコノス Amazon 『ありふれた金庫』北野勇作著を読む。 「百字小説」の第一人者の作品集。SFっぽいの、怪奇っぽいの、奇譚っぽいの、民話っぽいの、落語っぽいの、哲学っぽいの、メルヘンっぽいの、ミ…

J.J氏、1970年の日記

植草甚一読本 (1975年) Amazon 『植草甚一読本』 植草甚一著を読み返す。特に日記を。何度目だろう。 J.J氏を生前、渋谷で2度見かけたことがある。2回目のとき、追跡してみることにした。小柄で仙人のような風貌をしたJ.J氏は、ゆっくりとセンター街…

「書物のような歩行があるとすれば、歩くことに似た書物もある。それは歩行による「読解」を世界の描写に利用するということだ」レベッカ・ソルニット

未来散歩練習 (エクス・リブリス) 作者:パク・ソルメ 白水社 Amazon 『未来散歩練習』 パク・ソルメ著 斎藤真理子訳を読む。 スミと親戚のユンミ姉さんの物語と作家(兼業?)であるソウル在住の「私」が大好きな釜山に部屋を借りる物語。この二つ物語が交錯す…