『その謎を解いてはいけない』大滝瓶太著を読む。
主人公は名(迷)探偵・暗黒院真実と押しかけ助手の女子高生・小鳥遊唯。実は、作家でもある。二人が次々と起きる不可解な殺人事件に挑む。
ライトノベルの文体なんだけど、ライトじゃない。本格ミステリといえば、そうなんだけど、サブストーリーつーか横道に逸れてばっかで最初は読むのに難儀した。あえてそうしている、確信犯かも。
不可思議な殺人事件の謎解き、伏線回収や意外な真犯人を見つかることで読者は溜飲を下げるのが通常のミステリなんだけど、そんなことよりも探偵は登場人物の隠しておきたい心の闇(黒歴史)を明かすことに力を注いでいるような。
密室殺人の解明も、なんだかいい加減で。
ぐだぐだ、うじうじ、めんどくさい。好きなのに、好きとは言えずに「バ~カ」と言ってしまうような、ひねくれ、こじれハート。結局、全員、厨二病なんじゃね。
十代の頃、こっそり書いていた日記、小説や詩らしきものは永遠に封印したいものだが、探偵は見つけてしまう。
こんな5篇。
「第一話 蛇怨館の殺人」
山中を捜査中、日が暮れて偶然見つけた蛇怨館の泊まることになった二人に、殺人事件がウエルカム。
「第二話 いるんだろ? 出てこいよ」
ベストセラー作家・一色緑が行方不明となる。探偵事務所へやって来た作家・一二三。彼女は暗黒院とは高校の同級生で、一色とは文学賞の同時受賞者だった。
「第三話 どちらが主人公を殺したか?」
数学の天才的な双子の才能を発掘した准教授が殺された。犯人はどっちだ。
「第四話 黒歴史について語るときに我々の語ること(前編)」
廃墟マニアでは人気の高い建物で黒猫が殺されていた。黒猫連続殺人(猫?)事件はsnsで評判となり、黒稜高校の探偵部と捜査に出かける。
「第五話 黒歴史について語るときに我々の語ること(後編)」
黒稜高校水泳部部長・長野蝶がプールで死んでいた。密室犯罪か。
本格ミステリに詳しい人なら、どの作品のパスティーシュ、オマージュなのかがわかるんだろうね。
あ、装画は小鳥遊唯。その装画に騙されてはいけない。