赤は血、霧は謎

 

 

『赤い霧』ポール・アルテ著 平岡敦訳を読む。

 

1880年代のイギリス。自称新聞記者のシドニー・マイルズは、

10年ほど前、密室殺人が起きたブラックフィールドへやって来た。

小説のヒントにならないかと期待して。旅籠の娘・コーラの紹介で被害者の館へ。
殺されたのはリチャード・モースタン。

モースタン家はかつては羽振りを利かせていた名家だったが、
没落の一途。リチャードはアメリカへ渡り、事業が成功。

弟のダニエルは軍人となり、インドで名誉の負傷。退役軍人となる。

 

迷宮入りとなった兄の殺人事件。なんとか真犯人を見つけたい。
リチャードの肖像画が飾られた部屋に関係者が一堂に会する。
その日は娘エレナのバースデーパーティが開かれていた。

手品であっと言わせようとしたリチャード。
カーテンに隠れたかと思いきやナイフで刺され、絶命していた。


シドニーは刑事役をダニエルから言いつけられる。で、お約束の連続殺人が起こる。
たたみかける事件が読み手をくらくらさせる。

 

シドニーの助手役のコーラはかわいらしく、彼は「ほ」の字。
コーラからは「青髭」と揶揄され、ムッとする。

 

村の名士だったリチャードだが、隠された顔があった。


シドニー・マイルズは偽名で新聞記者ではなかった。

ブラックフィールドに所縁のある人物でもあった。
ローズは事故に遭い、失踪する。

 

と、ここまでが第一部。第二部は舞台がロンドンに。

 

名高い切り裂きジャックが残忍な殺人事件を起こして市民を震え上がらせていた。

シドニーはコーラと再会する。彼女は娼婦に転落していた。
切り裂きジャックは意外にもコーラかと早合点してしまった。
霧の都を闊歩する殺人鬼。ヤツはロンドン警視庁の包囲網をたやすくかいくぐる。

ひょっとしたら、身内かも。

 

第一部と第二部、最後の最後で伏線が見事というか強引に回収される。
なんかさあ切り裂きジャック怪人二十面相に思えてくる。

 

作者はこう書いている。
「ミステリ小説は“謎”と“血”という二つの言葉で定義できる、という説があります」

 

その説を支持するならば、まさに謎だらけ、血だらけの古風を装った本格ミステリだ。

 

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