ミステリ―作家密室殺人事件―「トリックは単純なほど、効果は大きい!」

 

 

 

『死が招く』ポール・アルテ著 平岡敦訳を読む。

 

ミステリ―作家ハロルド・ヴィガーズは新作『死が招く』を執筆中だった。彼は、書斎で中から差し金をして死んでいた。煮立った鍋に顔と片手を入れ、もう片方の手には銃が。これは『死が招く』の密室殺人と寸分違わぬシチュエーションだった。


さあ、難事件の始まり。犯罪学者アラン・ツイスト博士とロンドン警視庁警部アーチボルド・ハーストが颯爽と登場。第一発見者は刑事サイモン・カニンガム。ハロルド・ヴィガーズの娘ヴァレリーの婚約者。彼のことは過去の難事件を見事に解決してハーストも眼をかけている若手。

 

捜査が進むと、事態が次第に見えてくる。鍋は熱々だったが、遺体は死後24時間以上経っていた。

 

被害者かつては人気ミステリ―作家だったが、父親は息子が人殺しの小説を書いていることを認めず、折り合いは悪かった。また奇行など常人とは違った一面があり、妻のデインは辛い日々を送っていた。

 

ヴァレリーには自称画家の姉ヘンリエッタがいる。小さい頃、彼女は姉に不可抗力ながら怪我をさせ、姉は脳を損傷したらしく、物言いや行動がエキセントリック。姉は亡くなった祖父から寵愛を受けて育った。

 

被害者の妻の兄ロジャー・シャープは奇術師。最近では密室殺人の新たなトリックをハロルドに提供していた。

 

さらに進展すると、被害者には双子の弟スティーブンがいた。最近、ニュージーランドから渡英したが、行方不明となる。遺体はひょっとしたら替え玉。ミステリ―作家は生きているのか。

 

亡くなった祖父が甦り、不肖の息子に天罰を与えたとヘンリエッタは言うが。確かに、怪しい老人の姿を屋敷界隈で見たという。

 

出て来る人物がみな怪しい。犯人は、この中にいる。読みながら、犯人はこいつだ!はずれ!なら、犯人はこいつだ!はずれ!の繰り返し。

 

だって犯人と思われるうち何人かが殺されてしまうんだもの。『そして誰もいなくなった』そうなる前に、お待たせしました、アラン・ツイスト博士の長口上。『名探偵コナン』のように。密室殺人のカラクリを解き明かし、ついに犯人が判明する。

 

「トリックは単純なほど、効果は大きい!」これは、奇術師ロジャー・シャープの持論だが、この作品自体のキーワードでもある。

 

懐かしいようで新しい。読み出したら、止まらない。

 

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