2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ひりつく、辛口な短篇揃い

三十歳 (岩波文庫) 作者:インゲボルク・バッハマン 岩波書店 Amazon 『三十歳』インゲボルク・バッハマン著 松永美穂訳を読む。 彼女の詩を読む前に、短篇集を読んだ。小説というよりも長めの散文詩。そう思って読んだ。途中、ページを行きつ戻りつ。ヴァー…

読み出してすぐ妻(サイ)コパスとか妻(サイ)コキラーという見出しを思いついたが

恐怖小説キリカ (講談社文庫) 作者:澤村伊智 講談社 Amazon 『恐怖小説キリカ』澤村伊智著を読む。 香川隼樹が応募した作品『ボギワン』がホラー小説大賞を受賞した。一躍スポットライトを浴びる。 小説サークルの仲間からも祝福される。でも、ジェラシーの…

オール・ザット・平井呈一

平井呈一生涯とその作品 松籟社 Amazon 『平井呈一 生涯とその作品』紀田順一郎監修 荒俣宏編を読む。 平井呈一が水戸黄門なら紀田順一郎が助さん、荒俣宏が格さんだろうか。と、以前拙ブログで書いたことがある。 この本でやっと写真で平井呈一のご尊顔を拝…

パスツール曰く「観察の領域において、偶然は構えのある心にしか恵まれない」

科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか (中公新書 1843) 作者:酒井 邦嘉 中央公論新社 Amazon 『科学者という仕事』酒井邦嘉著を読んだ。 副題が「独創性はどのように生まれるのか」で、各章とも最初に著名な功績のある科学者を紹介から入っていく…

SFぽいの好き―ぼくがSFに出会ったころ

ぼくがカンガルーに出会ったころ 作者:浅倉 久志 国書刊行会 Amazon 『ぼくがカンガルーに出会ったころ』浅倉久志著を読む。 伊藤典夫、浅倉久志の両巨頭の翻訳作品は、随分と楽しませてもらった。もらっている。いままで書いてきたものを部厚い一冊にまとめ…

海の向こうで『サンショウウオ戦争』がはじまる

サンショウウオ戦争 作者:チャペック,カレル 海山社 Amazon 『サンショウウオ戦争』カレル・チャペック著 栗栖茜訳を読む。 読むまでは、サンショウウオ=当時台頭しつつあったナチスドイツのメタファーで、サンショウウオvs人類の闘争は、第二次世界大戦を…

『輝く断片』をピグマリオニズム(人形愛)といってしまえば、ハイ、それまでよ、か

輝く断片 (河出文庫) 作者:シオドア・スタージョン 河出書房新社 Amazon 『輝く断片』シオドア・スタージョン著 大森 望他訳、読了。 8篇の短編が収録されているが、やはり、トリをつとめる表題作が図抜けていい。大御所伊藤典夫の翻訳が、また、いい。なら…

百化繚乱―文豪たちの幻想童話

幻想童話名作選: 文豪怪異小品集 特別篇 (920) (平凡社ライブラリー い 36-2) 作者:泉鏡花、内田百閒、宮沢賢治ほか 平凡社 Amazon 『幻想童話名作選-文豪怪異小品集特別篇-』泉鏡花 内田百閒 宮沢賢治ほか著 東雅夫編を読む。いやはや豪華なアンソロジー…

小林泰三版イヤミス?―探偵事務所開業のためならば

因業探偵~新藤礼都の事件簿~ (光文社文庫) 作者:小林 泰三 光文社 Amazon 『因業探偵 新藤礼都の事件簿』小林泰三著を読む。迂闊にも出ていることを知らなかった。新藤礼都を知ったのは『密室・殺人』。頭は切れるが、底意地の悪い性格。脇役からついに主…

異界はボクらを待っている

十四番線上のハレルヤ 作者:普美子, 大濱 国書刊行会 Amazon 『十四番線上のハレルヤ』大濱普美子著を読む。 装画のインパクトで手にした。6篇の幻想短篇小説集。版元が版元ゆえ一筋縄ではいかないだろと読み始める。いろんな味わいがして、しばし異界へと誘…

赤貧笑うがごとし

無能の人 作者:つげ 義春 日本文芸社 Amazon 『無能の人』つげ義春著を読む。何遍読み直しただろうか。 志ん生ではないが、どうしてビンボー話が始まると、居合わせた、たいていの人は、盛り上がるのだろう。たぶん、それはかつてビンボーだったとか、ビンボ…

あげるな。誉めるな―学校、家庭、会社での報酬を批判する 

報酬主義をこえて 〈新装版〉 (叢書・ウニベルシタス) 作者:アルフィ・コーン 法政大学出版局 Amazon 本書は、「広く支持されている『競争』に異を唱え」、名著の誉れ高い『競争社会をこえて』の続編ともいうべき作品。まずは、アメリカ社会の根底を支えてい…

『ナウシカ考 風の谷の黙示録』を読みながら、マンガ版『風の谷のナウシカ』を読む

ナウシカ考 風の谷の黙示録 作者:赤坂 憲雄 岩波書店 Amazon 風の谷のナウシカ 全7巻箱入りセット「トルメキア戦役バージョン」 作者:宮崎 駿 徳間書店 Amazon 『ナウシカ考 風の谷の黙示録』 赤坂憲雄著を読む。民俗学や哲学などからマンガ版『風の谷のナウ…

『マルチチュード(上)(下)<帝国>時代の戦争と民主主義』昔、書いたのに若干プラスして

マルチチュード 上 ~<帝国>時代の戦争と民主主義 (NHKブックス) 作者:アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート NHK出版 Amazon マルチチュード 下 ~<帝国>時代の戦争と民主主義 (NHKブックス) 作者:アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート NHK出版 Amazon ネグリ…

守備範囲の広い作家

日本SFの臨界点 新城カズマ 月を買った御婦人 (ハヤカワ文庫 JA ハ 11-4) 作者:新城 カズマ 早川書房 Amazon 『日本SFの臨界点 新城カズマ 月を買った御婦人』 新城カズマ著 伴名練編を読む。 編者の解説を読むと作者はSFのみにとどまらず、ライトノベル、…

医学生がSF作家になるまで

高い城・文学エッセイ (スタニスワフ・レム コレクション) 作者:スタニスワフ レム 国書刊行会 Amazon スタニスワフ・レムの『高い城・文学エッセイ』を読んだ。 エッセイの最初に収録された作品『偶然と秩序の間で―自伝』を読む。作者はポーランド生まれの…

「進化は進歩ではない」―ポロポロポロ(目からウロコが落ちる音)

残酷な進化論: なぜ私たちは「不完全」なのか (NHK出版新書) 作者:功, 更科 NHK出版 Amazon 『残酷な進化論-なぜ私たちは「不完全」なのか-』更科功著を読む。 作者の専門は「分子古生物学」。何やら難しそうだが、この本は進化や自然淘汰などその核心をわ…

「地球上で最も獰猛な人食い生物は、カモなどの水鳥の無害な寄生体である」意外!

感染爆発―鳥インフルエンザの脅威 作者:マイク デイヴィス 紀伊國屋書店 Amazon 『感染爆発 鳥インフルエンザの脅威』マイク・ディヴィス、読了。 つらつらと雑駁なメモ。 ここを最初に引用。 「地球上で最も獰猛な人食い生物は、カモなどの水鳥の無害な寄生…