「地球上で最も獰猛な人食い生物は、カモなどの水鳥の無害な寄生体である」意外!

 

『感染爆発 鳥インフルエンザの脅威』マイク・ディヴィス、読了。

つらつらと雑駁なメモ。

ここを最初に引用。

 

「地球上で最も獰猛な人食い生物は、カモなどの水鳥の無害な寄生体である。毎年夏の終わりに、無数のカモやガンが、南へ渡るためにカナダやシベリアの湖沼に集まるころ、インフルエンザが大発生する。1974年に初めて明らかにされたとおり、ウイルスは、幼鳥の腸管のなかで、危害は加えずに激しく増殖し、水中に大量に排出される。するとほかの鳥がこのウイルスのスープを飲み、やがて幼いカモやガンの三分の一がインフルエンザのウイルスをまき散らすようになる。」

 

「インフルエンザウイルスは、カモがなんともないまま増殖するのである」


それがブタやヒトになると、インフルエンザウイルスは猛威を奮い出す。

鶏舎という生産効率を最優先したファクトリー的な農業スタイル(「家畜革命」)じゃあ、いざ、鳥インフルエンザなどが発症したらひとたまりもないわけで。
この本に紹介されているタイや中国の事例が恐ろしくて。
鶏を毎日捌いている人は、鶏の異変に当然気づくけど、それを経営者や国家は隠蔽するわけだ。香港の事例は、ほんとに異星人とのバトルのような、バイオホラー映画をイメージさせる。

 

鳥インフルエンザはおさまったわけじゃなくて、一時的に鎮圧されただけで、ウイルスはまた人間の予測を超えた、予測のつかないレベルで変異を遂げる。だったら宿主の渡り鳥を殲滅させろなんてバカな意見が出るかもしれないが。

 

このあたりももう一度考えてみないといけない。完全にやっつけること自体、ムリなのかもしれない。やっつけるんじゃなくて、発症しないようにうまくつきあうといった、まるで癌に対する接し方と同じなのだが。

 

「無防備」にならざるを得ないのは無知よりも貧困で、不衛生なスラムに最初に蔓延するのは、ロンドンのペスト大流行以来変わらぬパターン。

 

原因がウイルスと判明したとて、実際に食い止められなければ、ペストは悪魔の仕業といっていた時代と大して違わないのではないか。鶏舎とスラムが重なってしまって、管理とか。

 

作者は「経済のグローバル化に見合う国際的公衆衛生制度がない」ことを嘆く。
WHOもユニセフも脆弱化してしまったことを知る。


さらに「巨大製薬会社の」利権がからんでいる。タミフルなどのような治療薬が運良くめっかれば、ビジネスチャンスになるし、ノーベル賞だって夢じゃなくなる。

 

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