2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

12の怖いい話―和物幻想・恐怖・怪奇小説のヘレディタリー(継承)

高原英理恐怖譚集成 作者:高原英理 国書刊行会 Amazon 『高原英理恐怖譚集成』高原英理著を読む。 ホラー小説というよりも、文学の世界に軸足を置いた幻想・恐怖・怪奇小説といった感じ。たとえば「かげ」といっても、影、陰、蔭、翳などがある日本語。どの…

ポーはSF&ファンタジー作家でもあった

大渦巻への落下・灯台 ポー短編集III SF&ファンタジー編 (新潮文庫) 作者:エドガー・アラン ポー 新潮社 Amazon 『大渦巻への落下・灯台』エドガー・アラン・ポー著 巽孝之訳を再読する。 この3部作「ゴシック編」「ミステリ編」「SF&ファンタジー編」とカテ…

そしてバスは往く

ユリイカ(EUREKA) [DVD] 役所広司 Amazon セピアカラーの映像。うすぼんやりとした田舎の風景。たんたんとした時間が流れている。 主人公は九州の町でバスの運転手をしている。ある日、彼が運転しているバスジャックされる。サラリーマン風の男がいきなり乗…

カーテンの陰に潜んでいるのは?

カーテンの陰の死 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1773) 作者:ポール・アルテ 早川書房 Amazon 『カーテンの陰の死』ポール・アルテ著 平岡敦訳を読む。 友人のバースデーパーティーに出かけたマージョリー。はじめて出会ったダンスの上手いピーターにしつこ…

ミステリ―作家密室殺人事件―「トリックは単純なほど、効果は大きい!」

死が招く―ツイスト博士シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 作者:ポール アルテ 早川書房 Amazon 『死が招く』ポール・アルテ著 平岡敦訳を読む。 ミステリ―作家ハロルド・ヴィガーズは新作『死が招く』を執筆中だった。彼は、書斎で中から差し金をして…

いやあ辛口の映画でした

晩菊 [DVD] 杉村春子 Amazon 成瀬巳喜男監督の『晩菊』を見る。いやあ辛口の映画でした。 元芸者の三人の女性が芸者を卒業した後の生き方が描かれている。一人は独身で高利貸(杉村春子)になる。もう二人(細川ちか子と望月優子)はいっしょに暮らしているが、…

愛は気まぐれ

打ちのめされた心は 作者:フランソワーズ・サガン 河出書房新社 Amazon 『打ちのめされた心は』フランソワーズ・サガン著 河野万里子訳を読む。 かつて隠れサガン派だったぼくにとっては、新潮文庫版のサガン著、朝吹登水子訳、ベルナール・ビュッフェ画は3…

塚本邦雄、ミステリ―を書いてたってよ

十二神将変 (河出文庫) 作者:塚本邦雄 河出書房新社 Amazon 『十二神将変 』塚本邦雄著を読む。 現代短歌の巨人として知られる著者がミステリ―を書いていたとは知らなかった。塚本の短歌の世界をまんま小説に仕立てた。格調高い旧仮名・旧漢字遣いや小難しい…

新たな印象、ポーの短篇集

黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫) 作者:ポー 光文社 Amazon 『黒猫/モルグ街の殺人』ポー著 小川高義訳を読む。 『人工培養された脳は「誰」なのか-超先端バイオ技術が変える新生命-』フィリップ・ボール著 桐谷知未訳に、ポーの『告げ口心臓』…

おののく陰翳―恐怖と狂気と退廃の巴

巴 作者:松浦 寿輝 新書館 Amazon 誰にも知られたくない過去や、会いたくない人間の一人や二人はいるだろう。それが、恥ずかしい感情ではなくむしろ怖れに似た気持ちを抱いている場合なら、その度合いはかなり高いはず。 巴とは「外へめぐるような渦巻き(ス…

間諜・泰平ヤン、月での災難

地球の平和 (スタニスワフ・レム・コレクション) 作者:スタニスワフ・レム 国書刊行会 Amazon 『地球の平和』スタニスワフ・レム著 芝田文乃訳を読む。 ずっと気にはなっていたのだが、いまだ未読の『泰平ヨン』シリーズ。その最終作が本作だそうだ。でも、…

やさしさに包まれたなら

雨の島 作者:呉明益 河出書房新社 Amazon 『雨の島』呉明益著 及川茜訳を読む。 作者は元々ボタニカルアーティスト志望だったそうで、表紙や各篇の扉絵にその腕前を披露している。動物画だが、綿密でマジうまい。映画とか撮ったりするかも。 作者の小説がき…

三枚起請(きしょう)とタイガー&ドラゴン

落語研究会 古今亭志ん朝名演集 [DVD] 古今亭志ん朝 Amazon というわけでやっと志ん朝の『三枚起請(きしょう)』のCDを聴くことができた。口座でよかったよ、志ん朝。んなわけ、ない。 クドカン脚本のTVドラマ『タイガー&ドラゴン』の一話の元ネタなんだけど…

『誤作動する脳』とリカバリー

誤作動する脳 (シリーズ ケアをひらく) 作者:樋口 直美 医学書院 Amazon 『誤作動する脳』樋口直美著を読む。 突然、病に冒された著者。匂いがまったくしなくなり、光に過剰反応するようになる。などなど。 総合病院の精神科を受診し、うつ病と診断される。…