塚本邦雄、ミステリ―を書いてたってよ

 

十二神将変 』塚本邦雄著を読む。

 

現代短歌の巨人として知られる著者がミステリ―を書いていたとは知らなかった。
塚本の短歌の世界をまんま小説に仕立てた。
格調高い旧仮名・旧漢字遣いや小難しい漢字だらけの絢爛たる擬古文風文体。


ホテルで若い男性が突然死した。名前は最上立春。最上家は薬種問屋を営んでいた。
彼の鞄には、なぜか十二神将像のうちの一体があった。死因は阿片による中毒死だった。

 

彼は秘密結社のメンバーだった。京都のとある山に魔方陣を象った九星花苑を造園し、そこに非合法で罌粟(ケシ)を育てて秘密裡に宴を繰り広げていた。そこでは守り本尊が十二神将だった。

 

名家の飾磨家、同じく茶道の名家である貴船家、老舗の菓匠の真菅家。貴船家の親戚にあたる最上家。当主の飾磨天道は精神病理学者。妻・須弥の弟・淡輪空晶はサンスクリット学者。京都の上流階級が舞台。

 

最上立春は宝飾デザイナーの卵である飾磨沙果子と交際していた。彼女には海外へ商談に行くと告げていたのに。不審に思った彼女は謎と真相を探り出す。

 

偶然取られた航空写真から魔方陣を象った九星花苑の存在を知り、一面の白い花が罌粟の花であることを突き止めた沙果子だったが。


蘊蓄と含蓄と当意即妙な偏差値の高い会話。伝統と格式のある重厚な美が洪水のようにこれでもかと迫って来る。


そのゴージャスな世界は親交のあった中井英夫の『虚無への供物』、
ヴィスコンティの映像や三島由紀夫の作品などを彷彿とさせる。


全篇、ホモソーシャルホモセクシャル度が濃厚なのは言うまでもないが、
意外なことに女性キャラクターもそれぞれ個性的に描かれている。しかもたくましい。
男たちの秘密の花園なんて、たやすくぶっこわすほどに。美男・美女だらけ。


若い女性のおきゃんな感じ。奥方の美魔女的なところ。魅力的なのだ。
若尾文子加賀まりこか。秋吉久美子もいいなとか妄想。


漫画化するならば、宮谷一彦とか、意外なところで荒木飛呂彦あたりがよいなと勝手に思う。


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