新たな印象、ポーの短篇集

 

 

『黒猫/モルグ街の殺人』ポー著 小川高義訳を読む。

『人工培養された脳は「誰」なのか-超先端バイオ技術が変える新生命-』フィリップ・ボール著 桐谷知未訳に、ポーの『告げ口心臓』が取り上げられていた。
たぶん、まだ読んでいないので、どうせなら違った翻訳で読もうとこの本をチョイス。

 

そしたら、なんか、なうな日本語で既読の作品も違った印象を抱かせた。
なうだからいいというわけではないが、
なべて新訳の方が読みやすいと感じているのはぼくだけではないだろう。

以下、短いあらすじをば。

 

『黒猫』
そっか、主人公はDV野郎だったんだ。自称愛猫家、自称愛妻家なのに、キレると一変する。昨今、こんな輩が事件を起こしているが。ラストシーンも怖さがより強烈に迫って来る。


『本能vs.理性-黒い猫について』 
作者が飼っている黒猫が台所にある掛け金付きのドアを開ける行動を観察しながら、本能と理性の違いや優劣を検討している。猫は理性も高いと結論づけている。しかし、開けたドアを猫は閉めないなよ。少なくとも、うちで飼っていた猫は。

 

『アモンティリャードの樽』 
カーニヴァルの夜、「年代物のワイン」アモンティリャードを大樽で買ったというモントレーサ。ワインに目がないフォルトゥナートと二人で味見しに行こうと誘う。行く先は地下墓所。「人骨が石垣のようになった」ところに、大樽があった。モントレーサはフォルトゥナートを閉じ込め、地下墓所の穴を鏝で封印する。フォルトゥナートの声がだんだん弱くなっていく。

 

『告げ口心臓』 
資産家の老人を殺して死体を床下に隠蔽した私(召使?)。すると警察がやって来た。誰かが不審な物音を聞きつけ通報したらしい。私は足元に死体があるのにも平然と対応する。ところが、どこからともなく音がする。音は大きくなる。どうやら老人の鼓動らしい。長居する警官にも聞こえるのは時間の問題。居たたまれなくなった私は。

 

『邪鬼』 
用意周到に殺人計画を練って実行。男の財産を相続した私。罪の意識からか、あるいは気の病からか、悪夢にうなされる日々。自らそのことを告白して罪を受け入れる。

 

ウィリアム・ウィルソン
寄宿学校で同姓同名、生年月日も同じ同級生と出会う。毛嫌いしているのか、なぜかいつも私に抵抗する。イートン校で賭け事など自堕落な日々を過ごす。そこにも彼がいて妨害する。ヨーロッパに渡り、これで安心と思っていたら、また彼の姿が。ナポリ仮装舞踏会で遭遇して、決闘を申し込む。剣で刺し殺したが、その死に顔をよく見ると私自身だった。

 

『早すぎた埋葬』 
「生きたまま埋葬された」実の話を数例あげてから話は始まる。作者は雑誌編集者もしていたのでネタをいろいろ持っていたのだろう。私には「全身硬直症」という持病があった。それに罹るとしばらくは死者と同じ状態になると。
死んでもいないのに埋葬されてはたまらないと。そこで「墓所を中から開けられるようにした」。「棺もバネを仕掛けて体が動けば、棺の蓋がはずれる」など万全の準備をした。はずだった。いざ、件の持病が起こると目論見どおりにことは運ばなかった。読む、臨死体験か。


『モルグ街の殺人』
ここから推理小説、探偵小説が始まった。高等遊民というほど、財布が潤沢ではなかった「私」と「デュパン」は、本好きなど趣味が意気投合してパリの古びた館で一緒に暮らすことになる。ことあるたびに、デュパンの推理に、舌を巻く。きちんと人間観察や心理に基づいたロジカルなものだったからだ。ある種の天才と凡人がバディを組むというパターンも確立していたのか。モルグ街で「レスパーネ夫人」が惨殺された。二人は、この怪事件を探る。『モルグ街の殺人』に関する新聞記事とまったく関係ない新聞記事から意外な真犯人を見つけるデュパン

 

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