2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

「クン」づけで呼ばれたい女(ひと)

『男たちへ フツウの男をフツウでない男にするための54章』塩野七生著を読む。 時々無性に女の人から「クン」づけで呼ばれたくなる。駆け出しの頃は、女性のグラフィックデザイナーやコピーライター、スタイリストから「クン」づけでいろんな雑用を言いつ…

信ずれば死ぬ?バタくさい、スタイリッシュな今風のホラー小説

『とらすの子』芦花公園著を読む。ライター坂本美羽、中学生・川島希彦、女性警察官・白石瞳。3人の絡み合う不思議な縁で話はすすむ。 不可解な殺人事件が連続して起こる。snsで殺人事件の真相を知っているというミライと会うことになった三流オカルト雑誌の…

風街は、何処に在る

『風のくわるてつと』松本 隆著を読む。 嘘のような話だが、かつて、日本語ではロックは成立しない。というのが、まかり通っていた頃があった。その定説を覆したのが、何を隠そう、松本隆である。はっぴいえんどのドラマー兼作詞家から、アグネス・チャン、…

赦せるもの、赦せないもの

『金輪際』車谷長吉著を読む。 滅び行く私小説の継承者と目された直木賞作家の短編集。全7篇のテーマは、「ルサンチマン」(私怨)である。 本作の最初の作品「静かな家」を読んで、そのうまさに恐れ入り、こりゃ一気に読むのは勿体ないと思った。なかなか…

アート驚く おかんアート

『Museum of Mom’s Art-探すのをやめたときに見つかるもの-』都築響一著を読む。というか見る。 いわゆる「おかんアート」の本。ふつうのお母さんやおばあさんが、そこらへんにあったひもやリボンを創意工夫して動物や人形をこしらえる。リ…

スタイリッシュな「科学の社会論」

『自然 まだ見ぬ記憶へ』港千尋著を読む。 クローン羊ドリーが誕生してから、わずかな年月で本格的なヒト胚のクローニング研究に着手している。このES細胞は、あらゆる器官をつくる始原細胞、文字通り「ヒトの種子」として、新薬治療の開発から移植用臓器…

見えるもの、見えないもの、見えてくるもの、見えなくなるもの

『陽だまりの果て』大濱普美子著を読む。 光ではなく翳。太陽ではなく月。若さではなく老い。日常の中の非日常。それは特異体験ではなく、誰もが経験する体験。現(うつつ)と夢、健常と非健常の区切りはきちんと線引きできるように思えるが、その境界は実は曖…

温泉好意症―おんせんへ行きたしと思へども

『日本一周ローカル線温泉旅』嵐山光三郎著を読む。 温泉へ行きたい。リゾートだの、ホテルだのは遠慮したいな。性に合わない。旅館がいい。かといって名旅館はごめんだ。肩が凝る。第一、路銭がはなはだ心もとない。心付なんか幾らすればいいのかわからない…

リア充に不可欠な「贈与」って

『世界は贈与でできている-資本主義の「すきま」を埋める倫理学-』近内悠太著を読む。「贈与」というと、マルセル・モースの贈与論やポトラッチあたりかなと思って読んだらハズレでした。 作者は贈与をこのように定義づけている。 「僕らが必要としている…

「はじめに(光あれという)言葉ありき」―カート・ヴォネガットが書いたクリスマス絵本

『お日さまお月さまお星さま』カート・ヴォネガット著 アイヴァン・チャマイエフ〔画〕著 浅倉久志訳を読む。 絵を手がけたアイヴァン・チャマイエフは、「モービル、MoMAなど世界の名だたるトレードマークのデザイン」で知られる。はじめに彼の絵がありき。…

翻訳をめぐる冒険―新しい外国文学には新しい翻訳を

『翻訳を産む文学、文学を産む翻訳-藤本和子、村上春樹、SF小説家と複数の訳者たち-』邵丹著を読む。 膨大な資料にあたり「翻訳」を考察している。ただ内容がカブっているところが結構あるので、なんとかうまく整理してレビューにしたいと思う。 作者が…

男の美貌は、七難、隠す

『幻滅-メディア戦記』((上)(下))バルザック著 鹿島 茂 編さん 野崎 歓 訳を読む。 出版社はひと山当てるために血眼になって新しい才能を探す。当たれば、豪遊、別荘、パトロンだってほいほい運転資金を融資してくれる。一方、ごまんといる小説家志望…

奇想天外、荒唐無稽な高層タワーマンション国家

『タワー』ペ・ミョンフン著 斎藤真理子訳を読む。 舞台は674階建巨大タワーマンション「ビーンスターク」。『ジャックと豆の木』のあの一夜で天にまで伸びた豆の木に由来したネーミング。今様バベルの塔。しかも、そこは国家なのだ。タワマン国家。22階…

「男らしさ」養成ギブスを脱ぎ捨てるためには

『これからの男の子たちへ-「男らしさ」から自由になるためのレッスン-』太田啓子著を読む。 漫画『巨人の星』の主人公・星飛雄馬は、子どものとき、父親から大リーグ養成ギブスを装着させられていた。幼児スパルタ教育、いまならDVの一環になりかねないが…

読む、ワイドショー―ゴリオ爺さんの生涯

『ペール・ゴリオ パリ物語 バルザック「人間喜劇」セレクション (第1巻)』バルザック著 鹿島茂訳を読む。 なぜ、日本ではバルザックがポピュラリティーを得なかったのか。極論すれば、日本が物質的に貧しかったからだ。食べることに汲々としていては、やは…