信ずれば死ぬ?バタくさい、スタイリッシュな今風のホラー小説

とらすの子

『とらすの子』芦花公園著を読む。ライター坂本美羽、中学生・川島希彦、女性警察官・白石瞳。3人の絡み合う不思議な縁で話はすすむ。

 

不可解な殺人事件が連続して起こる。snsで殺人事件の真相を知っているというミライと会うことになった三流オカルト雑誌のライター坂本美羽。すると、「とらすの会」というカルト宗教に辿り着く。教祖である「マレ様」。その美貌のみならず不思議な力は、まさに教祖にふさわしい。マレ様に殺したいほど憎い、恨んでいる人を告知すると、なぜか残虐な死を迎えると。都市伝説か否か。ミライは美羽に助けを求める。狙われていると。半信半疑の彼女の目の前で事件が起こる。


中学生・川島希彦は、日本人離れした美貌と頭の良さを持ち合わせている。医師の父親とは血縁関係はない。アメリカにいた頃、父親の友人から赤ん坊の彼を預かることになった。そのかわいらしさと早熟ぶりは特に義父を満足させるものだった。

 

彼が同級生の男子と関係しているところを盗撮され、ゆすられる。相手は同級生の不良グループ。街で男性客を取らされる。嫌がらせは自宅にまでエスカレートする。ついに怒った希彦。気がつくと、同級生からさらに義父母まで殺戮されていた。その凄惨なシーンは、映画『キャリー』のラストシーンを想像したのはぼくだけではないだろう。スクールカーストやBLがうまく描かれている。

 

美羽は、「とらすの会」を訪ね、マレ様に会う。初対面なのに本心を引き出されてしまう。彼女は分かれた同性相手の男の名前を打ち明ける。当然、男は亡くなる。女性警察官・白石瞳は、ミライの事件の担当者の一人。美羽とは個人的に親しくなるが、その美羽も死を遂げる。


犯人を捕まえようと躍起になっている正義感の強い瞳に、事務官の高木がマル秘資料を見せる。希彦の出生の秘密が次第に明かされる。で、トラスの魔女たちの謂れも。おいおい、読むスピードがマッハになってくる。

 

瞳は単独で「とらすの会」へ。美しいマレ様に会う。希彦?いや、彼は「とらすの会」の施設内にいた。軟禁状態の彼にはもはや魔力はなく、ここから出たかった。反対を押し切って彼を助ける瞳。撃つなと念を押されていた護身用に所持していた銃を使う。希彦は自由の身となったが、瞳は世相に押されて警察官を辞することになる。新しい一歩を進もうとする彼女を赦そうとはしない魔の力が。


希彦は正真正銘の悪魔憑きだったのか。悪魔に心身ともに乗っ取られていた。映画『オーメン』のダミアンか。違う。希彦は魔女だったのだ。バタくさい、スタイリッシュな今風のホラー小説。


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