ポーはSF&ファンタジー作家でもあった

 

 


『大渦巻への落下・灯台エドガー・アラン・ポー著 巽孝之訳を再読する。

この3部作「ゴシック編」「ミステリ編」「SF&ファンタジー編」と
カテゴリ―別にまとめられているので、ポーの入門にいいかも。

 

本作は「SF&ファンタジー編」。以下短く内容を。


『大渦巻への落下』 
『メールシュトレームに呑まれて』のタイトルの方が有名かな。とてつもない大渦巻。これに巻き込まれたならば、脱出不可能とされていた。その伝説の大渦から逃れた漁師の命からがらの体験談。『白鯨』に通じる海洋恐怖小説の白眉。

 

『使い切った男』 
スミス准将は偉丈夫。ブガブー・インディアンとの戦争にも華々しい戦績を挙げ、勇名を轟かせた。だが、その代償に身体を切り刻まれる。准将は頭皮から手足までいたるところ精巧な代用品をまとう。義体だわね。「サイボーグ」ものの先がけだそうだが、ブガブー・インディアンの残忍さが黒い笑いを誘う。

 

『タール博士とフェザー教授の療法』 
舞台は南フランスのとある精神病院。患者たちがクーデターを起こし、医師たちは地下に閉じ込められている。偽医師などスタッフになりすます患者。これもまたシュールな笑い。

 

『メルツェルのチェス・プレイヤー』
「チェス・プレイヤーの自動人形」メルツェルはチェスの名人。その歴史やメカニズムを考察している。実話に基づいたノンフィクションともいえる。中の人は、どんな人?いいや機械さなどなど。AIやロボットものにつながるとされているが。 

 

『メロンタ・タウタ』
時代は2848年。気球に乗って冒険旅行をしている私が友人に宛てた書簡スタイルで話が進む。私が乗っている気球はもはや時代遅れ。高速で移動する巨大気球が主流となっている。気球からの下界の眺めや天体観測の話などSFチック。いい意味での「法螺話」と訳者は評している。
 

『アルンハイムの地所』
莫大な財産を相続したエリソン。その金で唯一無二の庭園造成を目指す。脳内庭園を具現化するために場所探しに4年の歳月を費やし、ようやく理想的な場所に出会う。彼の考える庭園の描写が幻想的かつ理想郷の如く素晴らしい。ユイスマンスの『さかしま』にも通底する。ちなみに『アルンハイムの地所』は1847年刊行、『さかしま』は1884年刊行。


灯台
未完のわずか4ページ余りの作品。灯台守の「わたし」と老犬。巨大な灯台の内部を探ってみると、「底部に空洞があること」を見つける。ああ、この先が読みたかった。

 

『NHK 100分 de 名著』の2022年3月が、エドガー・アラン・ポー。訳者が講師。

 

www.nhk-book.co.jp

 

 

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