「1945~75年の変格ミステリベスト10」(仮) 

 

 

変格ミステリ傑作選 戦後篇1』竹本健治選を読む。
「1945~75年の変格ミステリ10篇」(仮) 。
10篇にしぼるのがひと苦労のようで
泣く泣く収録を見送った作品も書名・作家名が記載されている。
おいおい面白そうなものを読むことにしよう。そうしよう。

 

『処女水』香山滋
博物教師Mはオタマジャクシに似た容貌をしていた。教え子の清子は美しい女学生。Mは密かに好意を抱いていた。彼女が標本室の水槽で全裸で亡くなっていた。まっ先に疑われるM。私立探偵UはMに話を聞くと標本室の水槽で研究テーマである「琥珀の処女水(ジュヴェニール)」について話したという。

 

『天狗』大坪砂男
個人的に好きな作品。何回読んでも空を飛ぶ喬子のオチとそのアイデアに度肝を抜かれる。

 

『陰獣トリステサ』橘外男
はじめ長いじゃんと思って読んだが、いやいや途中から引き込まれ一気読み。アレサンドロは勉強はできたが足が不自由だった。憧れていたフロールと学芸会で二人で発表することになっていたが、彼女は足の不自由な彼と一緒に立つのは嫌だと。ショックの余り、彼は登校拒否。自宅で学ぶようになる。

父親は一代で銀行を興し、アレサンドロは父の死後二代目頭取となって業務拡大に励む。名実ともに町一番の名士となる。女性はトラウマのせいか苦手だったが、こりゃまた美貌の伯爵未亡人ドローレスに惚れてしまう。金はある。ドローレスの言うがままに蕩尽する日々。しかし、寝室は別。夜の営みもお預け。ハイソな女性の間で珍しい犬をゲットして自慢するのが最近の流行らしく、怪しげなブリーダーから変わった犬種の犬を譲り受ける。それが「陰獣トリステサ」。愛玩ではなく、なんつーか、後家の狆(チン)とかで。

実情を知った彼は激高する。サイレンサーでまずトリステサを殺す。ドローレスはまばゆい裸身をさらすが、時、すでに遅し。

 

『死者の呼び声』山田風太郎
女子大生・蘆川旗江は、八興産業でアルバイトすることになる。良い条件でバイトできることになったが、30代の社長から突然ポロポーズされる。彼女のもとにお願いの手紙が届いていた。困った挙句社長に相談する。手紙には探偵小説が書かれていた。男には好きな女性・彩子がいた。しかし、ふられて阿季子と結婚した。後に彩子からやっぱり好きだと告白される。揺らぐ男。病弱な妻にモルヒネを射ち続け殺してしまう。死んだ妻から手紙が何通も届く。という内容。その男こそ…。

 

経営学入門』土屋隆夫
筆耕を生業としていた三平は、かつて投稿した推理小説が佳作入選したことを、より所に生きていた。何回か新作を応募したが、タッチの差で同じトリックのミステリが世に出ていた。彼はトリックには自信があった。そこで「トリック社」なる会社を立ち上げる。トリックに悩む作家にネタを提供する会社。たちまち評判となって繁盛する。しかし、斬新なアイデアはすぐに枯渇する。有名作家から高額な金額で依頼されるが。

 

『鵺の来歴』日影丈吉
探偵小説を書いているわたしに理学生の増村が話した体験談。鵺の絵が描かれた板額のある神社。それは増村と芸者の密会場所だった。そこで中学の先生・簑島に声をかけられ、鵺談義をしばしする。しばらく簑島の姿が見えない。鵺の絵が突然、消えていた。神社をうろついていると刑事に尋問される。簑島の妻が男と無理心中したという。


『方壺園』陳舜臣
豪商・崔朝宏の庭・方壺園。豪商宅に居候している高名な詩人・高佐庭。したい放題だった。彼は方壺園内で殺されていた。中華密室殺人事件。

 

『塩の羊』戸川昌子
フランスの観光地として名高いサン・ギャロン島の修道院。引き潮になると羊の足跡が見えるという伝説が。「東洋人の修道僧」がそれを見ようとすると沖に向かう羊が。
双眼鏡で確認するとそれは羊の皮をかぶった全裸の女性だった。ある日本人の男が訪れる、この地の三ツ星レストランで働いていた若い日本人女性が行方不明となり、その捜査に来た。第二次世界大戦の惨劇。その恨み。フランスの修道院を舞台に繰り広げられる妖しくも美しい世界。


『共喰い―ホロスコープ誘拐事件』小松左京
誘拐がさらなる誘拐を生むというもつれた話。ほんとに作者は何を書いてもうまい。


『空しい音―愛読者をさがす登場人物』中井英夫
『虚無への供物』の後日譚だそう。『虚無への供物』読んだけど、すっかり忘れてしまっている。

 

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