『ありふれた金庫』北野勇作著を読む。
「百字小説」の第一人者の作品集。SFっぽいの、怪奇っぽいの、奇譚っぽいの、民話っぽいの、落語っぽいの、哲学っぽいの、メルヘンっぽいの、ミステリーっぽいの、などなどいろんな味が楽しめる。
素材によっては生のまんまだったり、気づかないちころに隠し庖丁が入れてあったり。
ここから余談。400字詰め原稿用紙1枚をアナウンサーは1分で読むそうだ。100字なら15秒。百字と見ると、短いと思うが、15秒だと案外長く感じられる。
おいおい、『100文字SF』北野勇作著のレビューとカブっている。
TVCMやラジオCMのコピーを書いていた頃は、ストップウォッチ片手に原稿が尺内に収まるよう苦労した。
限られた字数でどこをカットして、どうイメージする世界を損なうことなく伝えるか。
ま、そこが腕の見せどころだろう。
演劇も俳優もこなす作者、朗読劇イベントもしているそうで、どおりでそんなにおいを感じた。
何が言いたいのか。「百字小説」は、言葉をギリギリまでカット、省略してあるのだが、余韻が深い。つーか、読後、脳内に100字に隠蔽された世界をチラ見させてくれる。見えてくるものは当然人によって異なるだろう。
作品によってはつながっているものもある。たぶん、これらの作品から長いものにふくらませられるものもあるはず。願わくば、長いものを読んでみたい。