いつか読んだ光景

 

わたしたちが光の速さで進めないなら
 

 

『わたしたちが光の速さで進めないなら』 キム・チョヨプ著 カン・バンファ訳 ユン・ジヨン訳を読む。

 

まず、タイトルがいいよね。

 

静かで哀しくて最先端の科学技術などをテーマにしているのに、どこか懐かしい。
ファンタジーというのか叙情派SF。なぜか日本のSF少女漫画の延長線上にある気がしてならない。具体的に作品名は思いつかないが。

 

以下あらすじと感想を。


『巡礼者たちはなぜ帰らない』
18歳になると成年式を迎え、「始まりの地」である地球へ移動船に乗って巡礼に行く。1年後大半の者は帰って来るが、戻らない者もいる。疑問を覚えたわたしは「禁書エリア」に忍び込んで本というものを読む。わたしの住む理想的な村をつくったリリーとオリーブ。「ヒト胚のデザインを完璧に成功」させ、非の打ちどころのない「新人類」が誕生した。しかし、問題も。


スペクトラム
「祖母は地球外生命体を探査するために設立された研究所」の研究員。探査船に乗ったまま行方不明となる。40年後に「救助された」。祖母が「宇宙人に会った」と言っても物証がなく、たわごとやボケと見なされた。祖母のファーストコンタクトを聞く孫のわたし。色が言葉という「色彩言語」を操る地球外生命体たち。イメージするだに美しい。

 

『わたしたちが光の速さで進めないなら』
「夫と息子」が移住したスレンフォニア惑星行の宇宙船を長いこと待つ老婆アンナ。彼女はコールドスリープ(人工冬眠)に不可欠なアンチ・フリーザーを研究していた。完成寸前で「高次元ワームホールが発見される」。長期のコールドスリープがなくてもあっという間にワープできるようになったのだろう。彼女はひたすらスレンフォニア惑星行の宇宙船を待つ。実はその航路はとっくに閉鎖されていた。寂れた宇宙ステーションは廃線となった駅を思わせる。そばに小さな彼女の船。

 

『館内紛失』
近未来の図書館は、亡くなった人のマインドをデータベース化したものを預かる場となる。ところが母親のマインドが紛失していた。あわてるジミン。妊娠中の彼女はそれまで図書館に通わなかった。マタニティ・ブルー気味の彼女は母親と疑似的でもいいから会いたいと思ったのに。母の過去を知る。生前は何かとこじれた母と娘の関係。それでも会えるなら会って話がしてみたい。母の書いた本からマインド接続機がアクセス可となる。

 

『わたしのスペースヒーローについて』
憧れのジェギョンおばさんにならってガユンは宇宙飛行士を目指す。その候補になった。女性宇宙飛行士としてジェギョンおばさんは事故で亡くなった。ヒロインとなったおばさん。ところが、真実は違った。そのことを航空宇宙局の担当者から知らされる。まもなく外部に漏えい。一転、非難を浴びる。非難はガユンにまで及ぶ。彼はおばさんの行動を考えながらも宇宙飛行士となる。

 

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