ビジネスから恋愛まで、ゲーム理論で勝ち抜こう

 

 

『戦略的思考の技術 ゲーム理論を実践する』梶井厚志著を読む。


最近よく耳にする言葉の1つが「ゲーム理論」である。これは「ゲーム攻略の理論」ではなく、「戦略的環境での意思決定を考える道具(分析ツール)」だそうである。
フォン・ノイマンが「ゲーム理論の基礎を創り」、『ビューティフル・マインド』の主人公ナッシュらがその有用性を拡大し、特に経済学で必要不可欠なものとなった。

参照ナッシュ均衡


戦略というと身構える方もおられるかもしれないが、ぼくたちは、知らず知らずのうちに、日常生活のさまざまなところで戦略を立て、それに基づいて行動している。

たとえば、本作からピックアップしてみると、おとうさんの「ビジネス交渉」-予算の丁々発止のやりとりやコンペ形式のプレゼンテーション。おかあさんの「バーゲンでの買い物」-いかにほしい商品をゲットするか、会場までの最短コースを時には下見するとか。独身者おなじみの「合コンの席順」-これなんて最も激しい戦略と戦略のぶつかり合いなのではないだろうか。

 

余談になるが、戦略はもともと軍事用語なのだが、マーケティング用語と実に重なるものが多い。戦術しかり、ターゲットしかり、一点突破全面展開しかり…。そうそう恋愛もそうだよね。その昔、ユーミンが「ラブ・ウォーズ」なんていってたっけ。

 

本作では、難解であるといわれる「ゲーム理論」についてキーワードごとにわかりやすい具体例を挙げながら、専門用語を極力排除して、懇切丁寧に紹介している。

この「戦略的思考」の中心になるのが「先読み」と「均衡」の考え方である。つまり

「相手の戦略を自分の都合のよいように予測せず、相手は自分の行動に対して最善をつくすと予想し、その予想のもとで自分も最善をつくすことを考える。お互いに予測される行動に対する最善の行動をとるような状態を戦略の均衡状態という」

 

リスクと不確実性」では、日本人の不得意なリスク管理について。「インセンティブ」では有効な奨励策のあれこれを。「コミットメント」では、信頼できる約束事の工夫とは。「ロックイン」では、囲い込み戦略。「シグナリング」では、「相手にシグナル(合図)を送り、自分の立場をより好ましいものにする」術(すべ)を。
スクリーニングと逆選択」では、ふるいわけ方。「モラル・ハザード」では、「経営倫理の欠如」の解消方法を。そして「値引き競争」と「オークション」と11のキーワードが章立てになっている。

 

一読すれば、いままでなんとなく行なっていた戦略が、より明快になり、また、どこが足りなかったか、どこを強化すればいいかが見えてくる。ゲーム理論は、ビジネスから恋愛まで、かなり使える一冊だと思う。ただし、策士、技に溺れずだね。

 

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