テクスト論者のテクスト知らず

 

 

いまさらながら加藤典洋の『テクストから遠く離れて』を読みだす。
こちらも噂、いやそれ以上におもしろい。

 

とかく人は、思想、文学、音楽など新しいものをありがたがるが、ほんと、それでいいのかと。なら古いのはダメなのかと述べる作者。思想や主義を紅茶キノコやタピオカなどとといっしょくたに流行扱いしていいのかと。

 

「テクスト論の致命的な弱点がここにある。それは、ポストモダン思想とりわけポスト構造主義の思想一般と同様、他の思想、他の批評理論の価値を否定し、これを相対化することは得意だが、自分から新しい普遍的な価値、批評原理を提出することについては不得意なのである」

 

(ここを読んでて、企業コンサルやプランナーなどギョーカイの人にも、あてまるなと笑った。もちろん、ぼくにも)

 

敬愛してやまない ライアル・ワトソンは、人間のことをネオフィリア(新しもの好き)と
称しているし。

 

「ほんとのことを言うと、あまりに小説というものを知らない人々が、慣れないものに手を染めた結果が、いまわたし達の前にある、テクスト論と呼ばれる批評である。わたしはただの読者として小説を読むということを心がけた」

 

おーモーレツ!シンラツ!まっとうな文芸評論家不在に一石を投じたと言うのか。脱テクスト論・文芸評論家宣言とも解釈できる書である。

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