転がる石のように……

 

 

絲山秋子著『イッツ・オンリー・トーク』を作者の筆力につられてぐいぐい読んだ。

 

『イッツ・オンリー・トーク

女性の主人公が実にさっぱりしている。男前というといろいろクレームがつきそうな今日この頃だが、そんな感じ。彼女は、バリバリの海外支局勤務の記者だったが、精神を患い、閑職となり退社。画家に転進する。いちどきは持てはやされたが、現在は、かつかつの暮らし。

地縁・血縁の無い蒲田にアトリエ兼住まいのアパートを借りる。そこで大学時代のクラスメイト、出会い系サイトで知り合ったヘンタイ男、同病のヤクザもん、根無し草のいとこなどとの不可思議なふわふわとした交流模様を描いている。

ぼくの知っている同業の女性にどうしてもイメージが、重なってしまう。彼女もこの小説の主人公同様、イタ車、同じランチャに乗っていると聞いたことがあるし。

まあ人生を降りた、無頼的なトーンからくる、あっけらかんとしたなんつーか自虐的な明度が魅力なんだけど、これって、色川武大とか、そのへんの世界なんだよね。結構きわどいエロい描写も出てくるんだけど、下卑ておらず、やはり、さっぱりしている。

主人公がクルマで聴く音楽は「キング・クリムゾン」。メンバーにエイドリアン・ブリューがいた頃。なんか渋さを感じる。

 

もう一つの作品は『第七障害』。こちらは、三軒茶屋が舞台。予備校の講師で、趣味ではじめた乗馬に、はまる主人公。自分に正直に生きている女性たちとグジグジしている男性の話。達観してるのか、でも、脆さと強さを併せ持ついまどきの人間像ってところに、えらく共感してしまった。


人気blogランキング