袋小路の男、『袋小路の男』を読む

 

 

2005年に書いたレビュー。

 

まだ読んでなかった絲山秋子の『袋小路の男』を昨夜からと地下鉄の往復でさくさくと読了。曙橋つーか、市谷河田町は、フジTVが以前あったところで、生CMの仕事で一時期通ったことがあり、懐かしいところ。

 

さて、『袋小路の男』。

 

a『袋小路の男』b『小田切孝の言い分』c『アーリオ オーリオ』の3篇。


aの返歌がbの作品。aがずうっと「あなた」という二人称で展開するのは、
倉橋由美子『暗い旅』へのオマージュか、それともデュラスあたりか。
ダスティン・ホフマンとミア・ファーローの映画『ジョンとメリー』のようでもある。

 

にしてもだ。ab、腐れ縁とでもいえばいいのか、初恋、最初の男(逆の場合は女)が強烈なインパクトがあると、そこからなかなか抜け出られないのだが、まさの、それを絵に描いたようなヒロイン。

 

男は頭はいいけど、社会的対応力、順応力が欠落している作家志望。
ようやっと新人賞の佳作を受賞するも単行本刊行にはいたらず宙ぶらりんの状態。
実にヤな野郎で。でも、もっとヤな性格じゃないと作家として大成しないのかな。

 

彼女は社会人になってみたものの、その男に未練があって
お遊びで他の男と寝てみたり、いろいろしてみるが、
結局は彼の引力のもと、衛星のようにぐるぐる回っているだけ。

いいオトナが何やってるんだって思われるかもしれないが、
要はオトナじゃないし、なりたくもないし。ただ年を取っていくだけ。って感じ。

 

建設的な恋、互いを互いに高めあっていく恋とか、
二人の年収を合算して生き方の質をステップアップしていくとか、
キャリアウーマン対象の雑誌の常套句だけど(違うか)、ぼくにはなんかキモイ。

 

cもそう。宇宙おタクの叔父さんとそれに感化された姪の話。
一見、ほほえましいように思えるけど、ちょっと待てよって感じ。
でも、彼の気持ちがわかる。実に。

 

ある種、投やりとまでにも思える作者のキャラクターたち。
読む方はヒリヒリするんだけど、うまくて止められない、極辛の柿の種のよう。

 

オチとしては、ぼくの住まいは路地奥にあるんで、文字通り「袋小路の男」。
あるいは小額の借金を方々にして首が回らなくなる寸前の「袋小路の男」。

 

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