『新井素子SF&ファンタジーコレクション2 二分割幽霊綺譚 扉を開けて』新井素子著 日下三蔵編を読む。以下2篇の感想や感想や感想やあらすじを。
『扉を開けて』
主人公は根岸美祢子。通称ネコ。マンションで1人暮しの女子大生。「奥様は魔女」じゃなくって「女子大生ネコは魔女」だったのです。隣人はボーイフレンドの斉木杳(はるか)。フリーのルポライター。ほんとはテレポーター(瞬間移動者)。類は友をヨブ記で
大学のクラスメイト・山岸圭一郎。常に異常に毛深くてケモノ臭がする。実は、山岸はライオン男だった。悩める超能力者たち。
ネコの部屋に3人が集まっているとき、突如部屋が溶解し始める。ネコたちは「中の国」という異世界に来てしまった。って『ナルニア国物語』?作者あとがきでそうだと。
「中の国」ではネコは「ネリューラ姫」と呼ばれる。あ、「中の国」の地名が西武池袋線の駅名にちなんでいるところが笑える。たとえばハノウ山脈→飯能、クメ川→久米川などなど。3人組は団結して敵の将軍と闘う。『アベンジャーズ』か。なんだかバトルゲームやアドベンチャーゲームをしているような感覚。はちゃめちゃぶりが読んでいて痛快。
『二分割幽霊綺譚』
13歳までは斎藤礼朗(のりあき)、それ以降は斎藤礼子(のりこ)となった主人公。彼女は「仮性半陰陽」だった。アンドロジナス、性同一性障害。体は女性、心は男性。美大生となった今も違和感を感じながら生きている。
不良にいちゃもんをつけられて困っていた美少女砂姫を助ける。すると彼女は礼子の部屋に猫のように居つく。砂姫は吸血鬼だった。ひょんなことから礼子らは冒険に出る。
そこにはもぐらやヒミズやミみみずがうじゃうじゃいたり、大食漢のもぐら女王が現れる。
礼子は亡くなって肉体の一部はシチューになったとか、ならないとか。幽霊となった彼女は挙句の果てに二分割されてしまったり。どーなる、礼子。読み出したら止まらないおもしろファンタジー。
いわゆる「性の入れかわり(TSF)」をテーマにした作品って漫画だと高橋留美子の『らんま1/2』があるが。彼女は男性性と女性性という性差でも二分割されている。発表された当時よりも現在の方が読んでいてしっくりくるというのか、良さがわかるのではないか。幽霊が真っ二つになったらという夢を長篇に仕立てた筆力には恐れ入る。
2作ともどちらも舞台は「第13あかねマンション」。キャラクターがすれ違うシーンも。
リーダビリティ、要するにすいすい読める文体は、アニメーションを見てるような感じ。
パソコンやスマートフォンやネットのなかった時代の作品。レコードは買うもの、映画は映画館かテレビで見るもの。本は書店や古書店で買うもの。暇なヤングは淡泊接触や濃厚接触することで退屈を殺していた。煙草もか。この作品にも喫煙の描写が多く出て来る。セブンスターか、ハイライト。女の子はセブンスターを喫っていた。前途を悲観している男の子が喫っている煙草はなーんだ?―ショートホープ。