ロックンロール創世記、神話、叙事詩

 

 

『ロックンロール七部作』古川日出男著を読む。

 

ワールドワイドなロックンロールの創世記、神話、叙事詩である。作者は村上春樹へのオマージュ本を出しているが、この本はひょっとして片岡義男の『ぼくはプレスリーが大好き』(または改題『エルヴィスから始まった』)へのオマージュなのではないだろうか。うん、たぶん、そうだ。そうに違いない。

 

なぜ七部作なのか。全世界=七大陸=七部作。となるそうだ。ほとんどコミックのようなノリでテンポよく読める。いっそのこと、漫画にして出せばいいのにと、余計なことなんだけど。

 

ロックが生まれてほぼ半世紀以上になるが、ロックンロールが猛烈な勢いで国境やイデオロギーを越えて若い脳細胞や身体に増殖していくサマが描かれている。しょっぱなは、そう、ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツの『ロック・アラウンド・ザ・クロック』。

「高校卒業後、トラック運転手をしていた」エルヴィスが母親への誕生日プレゼントに「自費でレコードをつくり」、「四ドルでシングル盤を一枚カットして」もらわなければ、キング・オブ・ロックンロールは誕生しなかったわけだ」(『エルヴィスから始まった』片岡義男著より)

 

さらに遡れば、生後まもなく亡くなった双子の兄がもし弟のエルビスの方だったら、やはりキング・オブ・ロックンロールは誕生しなかったわけで。

 

エルビスが映画にどんどん出演して、いわゆるサントラからシングルをドーナッツ盤に切らなければ、音楽の大量複製化、レコードの普及速度は鈍いカーブを描き、地球の隅々にまでエルビスのオーラやミームは伝わらなかったろう。

 

エルヴィス・プレスリーが『エド・サリバンショー』に出たときは、カメラはバストショットのみ。絶対に腰から下は映さなかったそうだ。腰をふって歌っているエルヴィスを見たとて、妊娠はすまいに。レイザーラモンHGは、いまの時代でよかった。

 


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