分かり合える?分かり合えない?分かり合いたい

 

 

『この世界からは出ていくけれど』キム・チョヨプ著 カンバンファ訳 ユンジヨン訳を読む。

 

意思の疎通の難しさ、マイノリティ(社会的少数者)の生きにくさや哀しさなどをテーマにした、やさしく、切ないSF短篇集。マイノリティは少数民族LGBT障がい者、難病の患者ばかりか、婚外子一人親家庭、少数派宗教の信者(カルト)なども含まれるとか。


『わたしたちが光の速さで進めないなら』と同様に話の設定や意外な展開に魅了される。気に入った、感じ入った何篇かを手短に紹介。


「最後のライオニ」
とある惑星。その探査をする「私」。かつて、この惑星に「巨大文明を築いた」人類。しかし、感染症により絶滅。現在は感染症に罹らなかった機械が支配者となっている。
「私」は「セル」と名乗る機械に捕獲される。セルはなぜか私を「ライオニ」と呼ぶ。ライオニとは欠陥のあるクローン人間のことだった。

 

「マリのダンス」
ダンススクールの講師をしていた「私」。大学の同級生の従妹・マリのダンスの先生を依頼される。マリはモーグ(視知覚の異常症者)だった。マリは踊るのは大好きで覚えも早いが、細やかな動きにはまったく関心がなかった。彼女は、「モーグ用の感覚補助装置「フルイド」」の助けを借りていた。いきなり、マリがモーグたちとダンスの公演を開くと聞く。ダンス公演はとんでもない事件となり、マリはテロリスト扱いされるようになった。

 

「ローラ」
ジンは大学のジムでアルバイトをしていたローラと出会う。なぜか、いつも危なっかしい彼女。11歳の時に、事故に遭う。それから、ありもしない「三本目の腕に痛みを感じるようになった」。そして機械の腕を三本目の腕として装着。彼にはまったく理解できなかった。別れることも考えたが、そんな彼女を愛していることに気づいた。

 

「キャビン方程式」
姉・ヒョンファは「時間バブル」を研究テーマにしていた。ところが、原因不明の病に罹り、行方不明となる。姉は、なぜか時間の流れが数十倍遅い世界に生きていた。妹・ヒョンジに姉から手紙が届く。観覧車にお化けが出るというが確かめに行ってくれないかと。妹は観覧車に乗るが。

 

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