赤ちゃんは、おっぱい帝国主義者

 

ふにゅう

 

『ふにゅう』川端裕人著を読む。

 

『ふにゅう』といっても中華料理のあのクサい「腐乳」じゃない、「母乳」に対する「父乳」。

 

この本には、いまどきのいろんな夫婦が出て来る。男女雇用機会均等法ではないが、男女育児均等法とでもいえばいいのか。ぼくの尊敬する故土屋耕一氏の伊勢丹百貨店の名コピー『生活の、同級生』を地でいっている夫婦。妻は母になっても、育児と仕事の両立をこなそうとするが、夫は父になっても、なかなかギアチェンジがうまくいかない。

 

育児休暇をとったり、妻が出張した日は定時退社で子どもを保育園まで迎えに行って、食事、風呂、ベッドで寝かしつけるまで、奮戦する若い夫父)。それは彼らの父親の世代から見れば、奇跡、あるいは堕落なのかもしれないが、いずれにしても信じられないことに違いない。何せ社蓄とか呼ばれてたから。

 

でも、でも、どんなに頑張っても、赤ん坊にとっては、おっぱいがすべてなんだ。おっぱいには、かなわない。この作品にも出てくるが、かつて、幾度となくぼくも痛いほど、実感した。母は頑強な母乳マシーン。

 

飢えた赤ちゃんの前ではペンは有効じゃない。お呼びじゃない。そう、赤ちゃんは強固なまでのガチガチのおっぱい帝国主義者。なら父親もおっぱいが出ればいい。そうマジに考えた作中の若いパパは、とんでもないことを考えつく。んなバカな。と、思うかもしれないが、子どもができたら、ましてやマジで子育てしようとしているパパなら、その気持ちはわかるはず。

 

どの短編にも、魅力的なサブキャラが登場して、よく効いている。それと実体験なんだろね、子どもの描き方がとってもナチュラル。

 

作者はPTAの役員などを引き受け、子どもと正対しているようだ。

 

ぼくも子どもの生まれた日のことや、退院した日、気合を入れて夫婦でのぞんだ保育園の面接、保育園の送迎、毎週月曜日のシーツ替えなど、いろんなことを思い出した。

 

補足:白熊父子のヌイグルミの表紙カバーがかわいい。

 

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