『エピデミック』川端裕人著を読む。
パンデミックは、鳥インフルエンザなどの感染症などが世界的に流行することを言うそうだが、エピデミックは、特定地域で流行る伝染病を表わすそうだ。
この手の小説の構造としては、ある地域をめぐり、まったく何の関連性を持たないような小さなエピソードがやがてじわじわとリンクしていって、ある種のパニックを引き起こすようなクライマックスへというのがお約束。
カタストロフィーを阻止しようとするのが、疫学者チーム。シングルマザーの疫学者が魅力的。ともかく感染の原因を探る。すると、ある新興住宅地が突き止められる。不確かな情報が流言蜚語となり、その地域の住民は村八分的扱いを受ける。snsが普及している今ならなおさら。
マスコミの対応、報道によるマッチポンプ的効用、医師同士の見解の相違。ノンフィクションと勘違いするほど、疫学などについては、よく描かれている。
しかし、何だか、読み終えて、やや不完全燃焼気味。たぶん、それは、フィクション、バイオホラーを期待してぼくが読んでいたからなのだろう。リアリティと荒唐無稽のほら話は並び立たないのか。
たとえばある地区にだけ原因不明の病気が起こる。で、伝染する。諸説ふんぷん。風土病だの、挙句の果てに祟りだの。
でも、小説なんで、それなりにきっちりと帰結してほしかった。話を拡散しすぎて収拾がつかなくなったのだろうか。狙いじゃないよね。あ、それは、伝染病の解明や根絶とかじゃなくて。でもなあ、わからないというのが、いまじゃいちばんリアリティがあると思うしな。