『野性の実践』 ゲーリー・スナイダー著 重松宗育・原 成吉訳を読む。
冒頭からちょいと長めの引用を。
「『自然』は科学のいわゆる対象である。~中略~『野性』は、こうした意味での主体にも客体にもならない。野性にアプローチできるのは内側からであって、自分とは何者かという問いのように、本質的なものである」
作者はヘンリー・デヴィッド・ソローと並び称される詩人であり、エコロジスト。ビートニクにも影響を与え、禅にも造詣が深い。
内容は小さい頃からティーンの頃の思い出から野性の実践法までバラエティに富んでいる。詩人であり、ウィルダネスライフの実践者ならではの自然に関する描写が素晴らしい。
「青山(せいざん)は、いつも歩いている」これは、道元が引用した中国の禅匠芙蓉道楷(ふようどうかい)の言葉をさらに作者が引用したものであるが、この章がなぜだかすごく心にしみ入ってしまった。
作者はかつて京都・大徳寺での禅の修業や、吉野の修験道を歩いた体験から述べているのだが、日本の山への洞察や言及は、含蓄のあるものとなっている。
訳者が解説で述べているように、気に入ったところから気楽に拾い読みしてもらいたい。
決して易しくはないが、「道を離れて道を行く」といったような、心を奪われる魅力的なフレーズを作者はところどころに突きつけてくるから。
山歩きやガーデニングが好きな人はもちろん、なんか壁に突き当たっている人にもおすすめしたい。