『今ここにいるぼくらは』川端裕人著を読む。
大昔の著者のブログで彼自身は現在SF作家ではないが、SFの土壌から作品が生まれていると書いていた。
この作品は「博士」と呼ばれる小学生と友人たち、川や山野を舞台にした連作集。大阪の町から東京近郊の開発中のベッドタウンへ転校してきた主人公。ぼくも転校生だったので、その気持ちがよくわかる。最初は新奇・好奇の目で見られる。なめられてもいけないし、その逆すぎでもいけないし。
最初の話で大阪の近所の川を遡るプチ冒険旅行が出て来る。ちょっと個性的なクラスメイトとの出会いやアタマにくるけど、気になる女の子の存在。周囲からは白眼視されているけど、未知の世界を開いてくれる近所の兄ちゃんなど、読んでいて懐かしくなった。
ほら、いたじゃない。ちょっと前までは西郷輝彦(古っ!)なんか歌ってたのに、突然、
フォークギターで岡林のプロテストソングを歌って聞かせてくれたり、吉本隆明の本を読み聞かせ(すごい読み聞かせ)てくれたり。
いまの子どもたちの世界はどうなのだろう。近所にあるプレイパークに子どもが小さい頃遊びに行った。自生しているノビルをとって食べたり、泥だらけになって遊んだりしていた。意外と田舎の子どもよりこのへんの子どもの方が自然と接しているかもしれない。
気持ちをふんわかさせてくれる上質の大人のファンタジーだ。
カバーに使われている横山孝一の多摩川の写真がなんともヌケがよくて素晴らしい。