広角綺堂隊

 

 

 

男女サッカーも、ヤクルトも、期待はしないが、
結果、期待はずれ。

 

飽きるまで同じものを食べ続ける人がいる。
飽きるまで同じ作家の本を読み続ける傾向のぼく。

 

『近代異妖篇 岡本綺堂読物集3』岡本綺堂著を読む。

青蛙堂鬼談』の続編で各人の怪談リレー方式。

 

『影を踏まれた女』が、ベスト。
「影踏み」という遊びを子どものときにした。
親や先生の影をこっそり踏んでは喜んでいた。
娘が保育園に行っていた頃、こおり鬼に凝っていて。
近所の公園で行なった。
いまの子どもはしないのだろうか。
17才の少女が主人公。
夜、近所の悪ガキに影を踏まれる。
逃げ帰った彼女。
影を踏まれると寿命が縮まるといわれている。
以来、影を踏まれないように
出歩かなくなった彼女。
確かに、この娘は心の病。
祈祷師よりもセラピーなのだが。
すっかり痩せ細った彼女。
灯りに映る影が骸骨…。
ふとユングの影(シャドウ)を浮かべる。

 

『水鬼』
某地方の川に棲息する「幽霊藻」。
なんたってこのネーミングが秀逸。
「平家の美しい官女が落ちのびて、水を飲もうと
したらあやまって川に落ち、亡くなった」
それが「幽霊藻」になったという謂れがある。
「「幽霊藻」に触れた若い女性は祟られる」とも。
「幽霊藻」をいたずらに触らせられた女性の凶行は、そのせいなのか。
見事な着地。

 

『河鹿』
舶来の人形。
「右の手をあげると自然に「パパア」といふ声が出る。
左の手をあげると「ママア」といふ声が出る」。
小さな娘のお気に入りだったが、こわれてしまい、
欧州の会社に修理を依頼する。
娘はその間「流行性感冒」、インフルエンザね、で亡くなる。
「仏前に備えた人形」。夜中に「パパア」「ママア」という声がする。

 

こわさへのネタフリの広角さ、話の面白さ。
美しくムダのない日本語。
もはや綺堂隊の一員になってしまった。

 

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