足止めを食らった旅人たちへ

 

 

『四分の一世界旅行記』 石川宗生著を読む。

作者のことだから何か古い偽旅行記を読んでいるうちに
その時代にタイムトラベルしてしまう、そんな奇想小説をイメージして読み始めた。
あれれ、ガチ旅行記だった。

 

作者の趣味は粘土(何のこっちゃ)とバックパッカー
これまで世界各地をバックパックで訪れたそうだ。

 

旅行記というといまだに沢木耕太郎の『深夜特急』が、なう、らしい。
ぼくもわくわくしながら読んだもんさ。
ところがスマートフォン、インンターネット、クレジットカードなどの普及で
貧乏バックパッカーの旅は無謀さ、危険度が低くなったとか。

 

とはいえ、外国への一人旅は、それこそ自己責任、自己判断。つってもお気楽。
一度はまると中毒になるようだ。だってすべてがリアル体験だもんね。

片言英語が通じたときのうれしさ。
映像や画像ではない生の風景。
ハプニングやアクシデントや差別や理不尽な目に遭いながらも、
日本に戻ってしばらくすると漂泊の念にかられる。
旅をしているときのオレが本来のオレだとか。


この本で書かれている旅は「2017年」。主に中央アジアからトルコ、ギリシャ、東欧と
約6ヵ月かけて世界の「四分の一」を巡る。

旅で知り合った人々や宿の人たちとの交流がユーモラスに描かれている。

トルコの宿で出会った男を勝手に「ブコウスキー」と呼んだり。
彼に旅の詩「メテオラでいちばんの美女」をつくらせているが、
ブコウスキーパスティーシュになっていれクスッとした。

アルメニアは美女しかいないとか。
ジョージア(旧国名グルジア)の料理はうまそうだとか。

セルヴィア・レスコヴァッツでクストリッツァ監督の音楽ライブに行くが、
チケットはソールドアウト。ところがあしながおじさんが現れて。

 

日本人の女子のバックパッカーも登場している。
経歴は異なるが、みんな元気で魅力的。いやはや男子など足元にも及ばぬくらい度胸も社会性もある。

 

行く先々にある世界遺産。ほんとゴロゴロしているんだね。

 

巻末の「特別対談 宮内悠介×石川宗生」も楽しい。
インドの印象。
「石川 インドでは騙そうとする人にたびたび出会って、そのときは「二度と来るか!」と思うんだけど、五年くらいすると忘れてしまうんですねよね。結果、めぐりめぐってまた行っちゃう(笑)」
「宮内 ―略―話しかけてくる人は、まあ、だいたい騙しにかかってくる人ですよね」

コロナ禍で海外旅行は難しいので、この本を読んで行った気分に浸ろう。

 

忘れていた。各章のタイトルが名作のオマージュになっている。
たとえば「パスポートナンバーTK49494949の叫び」。
モトネタはわかるよね?

 

人気blogランキング