「農業にも兵器にも使える技術」

 

 

『戦争と農業』藤原辰史著を読む。

 

『歴史の屑拾い』 藤原辰史著で著者が「戦時下、トラクターが戦車になった」という一文があって、もう少し深く知りたいと思ったら、この本に出会った。

 

以下、雑感メモ。

〇トラクターの出現により農業は一変した。それまでの農耕馬の代わりに農地を耕す。エサもいらない、伝染病の心配もない。ただし、農耕馬の糞は貴重な肥料になっていた。その代わりとして化学肥料が開発された。

 

〇トラクターに農業の生産量の向上を期待したのがソ連の初代指導者・レーニンスターリンの時代には、ソホーズ、コルホーズなど大規模集団農場化を推進した。ところが、トラクター不足で「依然として馬が重要な役割を果し続けた」。

 

第一次世界大戦は戦車、潜水艦、飛行機、毒ガスなどが初めて登場して、戦争のスタイルを変えたといわれる。


「トラクターは戦車に、化学肥料は火薬になった」

 

「民生技術を軍事技術に転用することを「スピンオン」と言いますが、トラクターがスピンオンされて戦車に変身したわけです。内燃機関があって、キャタピラーがあって、平らでない土地、すなわち不整地に強いのがトラクター。その開発技術は軍事技術としてこれ以上ないほど適したものでした」

 

「科学肥料が、空中の窒素を固定してアンモニアを作ることで実現しましたが、合成されたアンモニアから火薬の原料である硝酸を生成することができます」

 

第一次世界大戦後、処分に困った「毒ガスは農薬」となった。


「青酸カリは危険なので、ものすごく薄めて人間には無害なようにしたうえで、たとえば穀物倉庫などに撒き、害虫対策として使われました」

 

「「ツィクロンB」は、殺虫剤として広く受け入れられ、ヒット商品となりました。しかしそれが、ヒトラー政権下に、思わぬ方法で使われることになってしまいます。強制収容所ユダヤ人を虐殺するために使われた毒ガスがまさにこれだったのです。ちなみに、ナチスは戦争では毒ガスを使用していません」

 

この本では、遺伝子組み換え食品の功罪や飽食と飢餓など幅広いテーマに言及しているが、あえてしぼってみた。


ふと、アニメーション『鉄人28号』の主題歌の歌詞を思いだした。
「ある時は正義の味方 ある時は悪魔の手先 良いも悪いもリモコンしだい」(作詞/作曲 三木鶏郎)中高年の方なら、知っているはず。

 

テクノロジーも使い方次第で、真逆になる。つーか、天使と悪魔の両面がある。


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