短命に終わったワイマル文化の全貌とは 

 

 

 

『二十世紀思想渉猟』生松敬三著を読む。    

 

第一次世界大戦後のドイツ。ワイマル共和国が樹立する。時は1920年代。俗にいうところのワイマル文化が花開く。

 

カンディンスキー、グローピウスなど名だたる芸術家、建築家が教授をつとめ、モダンデザインの礎を築いたバウハウスダダイズム、キャバレー(同名のライザ・ミネリ主演のミュージカル映画があるが、この時代の世相や風俗がうかがい知ることができる)。

 

さらに「ドイツ青年運動」。というとなじみがないが、別名「ワンダーフォーゲル」というと、大抵の人が「あ!」というだろう。山野を歩き、心身を鍛える運動も、この時代に全国的な運動として広まった。

 

本書で最も印象に残ったのは、ジンメルが展開していた「生の弁証法」も、フーゴー・バルがキャバレー・ヴォルテールで夜な夜なパフォーマンスを繰り広げていたダダも、出所は、同じカント批判であったということ。

 

「19世紀を支配していたカントの『主知化』『合理化』『歴史主義』」の帰結にほかならない」とペーター・ヴーストは『形而上学の復活』で述べている。カントに象徴される合理主義が第一次世界大戦の元凶の要因ともなったようである。その振り子の反動が、対極的に向かうのも当然のことであろう。

 

人智学を唱えたルドルフ・シュタイナーに、カフカが会いに行ったというエピソードも、興味を大いに抱かせた。

 

しかし、敗戦国となったドイツのルサンチマン(私怨)は、時代の振り子を再び不幸な戦争へと向かわせるのである。

 

本書は1920年代ドイツの文化、科学、思想、芸術などについて知的好奇心の赴くままに綴られたものである。各章が寸分の隙(すき)もなく、きちっと構成されていない、その緩(ゆる)さが、読む者に、散策しているような楽しさを与える。

 

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