或る不幸な少女

 

 

『星の時』クラリッセ・リスペクトル著 福嶋伸洋訳を読む。

 

第八回日本翻訳大賞受賞作品。行きつけの図書館、半年待ちか、一年待ちか、
ネット検索したら、ありゃりゃ、そんなことはなかった。ラッキー。
で、予約して自転車を飛ばして借りに行く。するすると読了。

 

ブラジル北東部(ノルデステ)からリオ・デ・ジャネイロにやって来たマカベーア。
親代わりに彼女を育てた叔母が亡くなったことを知る。
その彼女を定点カメラのように、ストーキングでもしているかのように
延々と作家・ロドリーゴのモノローグが続く。

 

マカベーアとロドリーゴ、どちらも作者の分身。
作家がいろいろな登場人物を書き分けるさまは、多重人格者か
登場人物が降りてきて憑りつかれる霊媒師のように思える。

 

似た言葉を繰り返すが、マカベーアはピュア、イノセント、無垢、純粋、世間知らず、無知。嘘つき、妄想に逃げ込む。どことなく「赤毛のアン」みたい。

 

タイピストの職を得た彼女は、冶金技師のオリンピコという恋人ができた。
若い二人は他愛のない会話をする。3回デートして3回とも雨だった。
彼はマカベーアを「雨女」と決めつける。お前が「雨男」かもしれないのに。

 

野心家で盗癖のある彼は、「彼女の同僚」であるナイスバディなリオっ子のグローリアに惹かれる。カントリー娘は野暮ったいのか、結局、ふられた。

グローリアは、そんな彼女がほっとけず、なにかれと世話を焼く。
恋人を盗られたことよりも友だちができたことの方がうれしい彼女。

 

ロドリーゴは、マカベーアの人生の行く末を知っている。
ペンもしくはPCキーボードで運命とて簡単に変えることもできる。
しかし、手を差し伸べたりはしない。物語の領域侵犯になるからだ。

 

マダム・カルロータに将来を占ってもらった彼女。占いでは未来は光り輝くと。
なのに、現実は…。そしてロドリーゴも。

 

ネット上の噂では難解とかいわれていたが、読みはじめると、文体と構成に懐かしさを感じた。日本版は2021年に刊行されたが、オリジナルは1977年に刊行されている。
ちょうど、その頃、こういう感じの小説をよく読んでいた気がする。
ええと、ナタリー・サロートマルグリット・デュラスとか。

 

訳者あとがきによると読みやすさを優先した翻訳を心がけたと。
だから、すらすら読めたのか。


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