ポストモダン・フェミニズム文学

 

 

『彼女の体とその他の断片』カルメン・マリア・マチャド著 小澤英実訳 小澤身和子訳岸本佐知子訳 松田青子訳を読む。

 

クィア(奇妙な)味の短篇集。リチャード・ブローティガンの作品を読んだときのような、リディア・デイヴィスの作品を読んだときのような。でも、違う。性的なシーンを描写しても過激、生々しい、痛々しいとは思うが、エロティックさは、さほど感じられない。それは、ぼくが男だからなのだろう。


既存の小説を解体、超越したポストモダンフェミニズム文学。ちょっと大仰かも。
各篇のストーリーを書いてもあまり意味はないんだけど。


『夫の縫い目』小澤身和子訳
「首の後ろに緑のリボン」のある「私」。夫になった彼はさわりたがるが、決してさわらせない。妊娠、出産する。産んだのは男の子。リボンはない。やがて大学に進学する。再び、二人きりの暮し。夫がリボンをほどく。すると…。リボンは何のメタファーなのだろう。

 

『リスト』 松田青子訳
職業、出会いそして別れまで、さまざまなセックスの体験談風ショートストーリーが続く。やがてウイルスの蔓延により人はいなくなる。

 

『とりわけ凶悪』 小澤身和子訳
ニューヨーク市警察の刑事たちが捜査する性犯罪事件を描くテレビドラマシリーズ」の「タイトル」から創作。「シーズン12」まで「ベンソンとステイブラ―」の女性刑事と男性刑事のバディが活躍。100文字SFのように濃密でかつポップ(死語?)。


『本物の女には体がある』 岸本佐知子
その町では次々と女性が突然消えてしまった。正しくは透明になってしまった。原因は不明。「グラム」というブティックでアルバイトをしている「私」とペトラは、ペトラの母親が経営するモーテルで結ばれる。「私」はペトラの母親のモーテルで透明になった女性を目撃する。悲しげで恨めし気。こともあろうに恋人のペトラが消えていく。「女性は存在しない」というラカンのフレーズをあえて小説化したような作品。


『レジデント』 小澤英実
作家が山の中にあるデヴィルズ・スロートのレジデントに招かれる。かつては高級リゾート地だったが、大恐慌で放置。アーチストたちが集う施設として再生。彼女が車で近づくにつれその外観が見えてくる。なんとなく漂う、怖さ、違和感。ホーンテッド・ハウスものとしても読めるが、作家の内面崩壊がそう感じさせるのか。 ヴァージニア・ウルフの『壁の染み』あたりを彷彿とさせる。

 

『パーティーが苦手』 小澤身和子訳
病院から「私」を部屋まで送ってくれたポール。なぜか「私」はエロ動画のDVDを注文、部屋で見る。時折画面を一時停止しながら。ポールがパーティーに誘う。行き先は古い農家をリフォームした大きな家。いきなりビデオカメラに撮られた「私」。今度は撮る方に。そして部屋で再びエロDVDを見る。


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