元祖改造人間「蠅男」―「みなさん、気をおつけなさいまし」

 

 


『蠅男 (名探偵帆村荘六の事件簿2)』 海野 十三著 日下 三蔵編を読む。著者は、

早稲田大学理工科で電気工学を専攻。逓信省電務局電気試験所に勤務しながら、機関紙などに短編探偵小説を発表」

海野十三 - Wikipedia

いわば理系の人が当時の最先端知識をベースに荒唐無稽なSFや変格ミステリを発表した。4篇紹介。

 

『蠅男』

大阪で謎の殺人事件が勃発する。共通しているのは、現場に残った臭いだった。やがて脅迫状が届く。手紙には蠅のミイラが。差出人は「蠅男」。彼を捕まえようと名探偵帆村荘六、登場。意外なことに帆村探偵、腕っぷしもなかなかのもの。安楽椅子探偵ではなかった。腕が機関銃になるなど、戦闘能力の高い蠅男に負けてはいない。追いつめては逃げられる。派手なアクションシーンの連続。蠅男は神出鬼没。

ついに、蠅男の素性が判明する。彼は蠅男の改造に関わった人たちへのリベンジのために大阪にやって来た。恐るべきマッドドクターのおぞましい「縮小人間」計画。その人体実験となった不運な男。帆村と被害者の娘・糸子とのラブロマンスが花を添える。1938年に刊行された『蠅男』。いやはやその先見性の高さには恐れ入る。

 

「みなさん、気をおつけなさいまし。深夜、あなたのお家の天井裏をゴトリゴトリとなにかひきずるような音をたてて匍ってゆくものがあったら、そいつは今天下に有名な彼の「蠅男」ではないかと、一応疑ってみる必要がありますよ。帆村荘六」(ラジオ科学社版『蠅男』巻頭の一文)

 

テレビドラマ化、ラジオドラマ化したら絶対、ナレーションにしたい。
で、今回の「蠅男」は。と続く。


『暗号数字』
帆村荘六内務省情報部事務官木村から極秘の事件の調査を依頼される。上海にあると思われる反政府団体からの暗号文書が届く。その解読をしてほしいと。暗号は虫食い算。解読のために日本中を走り回る帆村。実は、その裏には…。

 

『千早館の迷路』
遺書を書いて失踪した田川の捜索を依頼された帆村。帆村と依頼人の春部カズ子は、栃木の山奥にある「千早館」を訪ねる。その館は偶然帆村が面識のあった古神子爵が建てたものだった。在原業平の和歌「千早ふる~」から命名されたが、その句に謎が隠されている。凝りに凝った部屋を探る二人。危険な仕掛けも。地下に鍾乳洞があるなど、なんかゴシックホラー味が楽しめる。


『断層顔』
時代は30年後の1977年。帆村も齢を重ねて肺は人口肺臓を装着している。女性からボディガードを依頼される。怖い顔をした男がストーキングしていると。甥の蜂葉が助手となって行動をともにしている。彼は火星探検隊の一員だった。オチはSF。いま、実現しているのは、動く歩道ぐらいだろうか。


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