『批評の教室-チョウのように読み、ハチのように書く-』北村紗衣著を読む。
劇評、映画評、書評などいろいろな批評がある。
ひとつ、自分も書いてみるかとノートPCや帳面を広げる。
twitterなら、短いんで速攻、ツィートできる。しかし…。
たとえば書評。あらすじをまとめたものは違うのか。ネタバレにもなりがちだし。
個人的な思い入れたっぷりのラブレターみたいなものは、伝わらないか。
蘊蓄をひけらかしたり、引用ばっかじゃ、お前、結局何が言いたいのかってことになるし。
作者が考える良い批評とは。
「私が一番大事だと思っていて、繰り返しいろんなところで言っているのは、批評に触れた人が、読む前よりも対象とする作品や作者についてもっと興味深いと思ってくれればそれは良い批評だということです」
どうすれば批評が楽しく書けるようになるのか。
『あしたのジョー』に倣えば「明日のための(その1)は精読する」、「明日のための(その2)は分析する」、「明日のための(その3)は書く」。まずはこの3ステップをマスターせよと。
「精読する」で面白いと思ったのは、小説なら
「登場人物や地の文を信じないこと」
作者に対して眉ツバ的態度は大事だが、
「テクストが生まれてきた歴史的背景は押さえておかない」
と。構造主義っぽい。つーか、そのものか。
「分析する」でなるほどと思ったこと。
「タイムラインに起こしてみる」「人物相関図に起こしてみる」
時系列や人間関係を整理することでその作品の枠組みが見えてくる。
いわば「書く」ための仕込み。
「書く」で禿同したこと。
「自由にのびのび書いてはいけない」
つらくても、この本に書いてあるメソッドの通りに書いてみる。
ピアノでいうならバイエルとか。
『巨人の星』の「大リーグ養成ギブス」とか。
「精読する」「分析する」「書く」の理論編にプラス実践編がついている。
どこに着眼してどのように書けばよいのか。良いお手本となっている。
『批評の道場』や『批評の虎の穴』というタイトルだったら、
批評千本ノックやうさぎ跳びしながら批評するうさぎ跳び批評とかね。
私立探偵を英語でprivate eyeというが、独自の批評眼が持てればってことか。
道は遠いかもしれないが、まずはこの批評スタイルを模倣してみよう。
場数を踏んで、本数をこなせば、やがて自分のスタイルが生まれるはずだ。
余談
著者は映画『ミッドサマー』を単なるホラー映画よりも「ロマンティックコメディ」として捉えている。居場所がなかった女子大生が北欧の村で居場所を見つけた話だものね。