ユートピアとディストピア

 

フェミニジア―女だけのユートピア (1984年)

フェミニジア―女だけのユートピア (1984年)

 

 ガスファンヒーター点火初め。

 
フェミニズム関連本のレビューが続くが、まったくの偶然。
 
『フェミニジア 女だけのユートピア』シャーロット・P・ギルマン著 三輪妙子訳を読む。きっかけは、『お砂糖とスパイスと爆発的な何か—不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』北村紗衣著で紹介されていたから。
 
だってさ、『黄色い壁紙』の著者の作品なんだよ。
『黄色い壁紙』は怪談のカテゴリーだけど女性の心象風景をとらえた優れた短篇。
絶版のようでamazonでは高値がついている。こういうときは、図書館だ。保存庫にあった。ラッキー。
 
「三人の男」による「女だけの国」探訪記。
 

「女性たちの基本的な特徴は、母性だ。母性がすべての文化の基盤になっているわけだが、俗にいう「女らしさ」は、著しく欠乏している」

 

 
この場合の「母性」は、国の次代を担う子どもを産んで育てるという意味。
でも母性本能とかに何か押しつけがましいものを感じる女性は少なくないはず。
父性、男らしさっていまだによくわからないし。

「僕らが好む「女らしい魅力」というのは、女性が生まれつきもっているものではけっしてない。たんに男の好みが投影されているにすぎないし、それは男を喜ばせるために、女性がつくり出したものだ」

 

異性、男性が存在しないのだからアピールするための演技やぶりっ子は不要。
なんか女子高状態って感じ。なら、「母性」とて同様なことが言えるのでは。
ただ「女らしさ」がいらなかったら、生きるのは楽かもね。
 
「女だけの国」は、出産も人口管理も一切が適正に管理されている。犯罪も起こらない。一見、平和な楽園に思えるが、それには裏がある。住人が話す。
 

「私たちがまず最初にしたことは、こうした欠陥人間を訓練して改良することでした。そして、可能な限り人工淘汰したのです」

 

自然淘汰じゃなくて人口淘汰。
理想の国をつくるため、未来永劫、維持するために。
規定通りではない製品は欠陥品としてはねられる。人間もその扱い。

優生学の思想じゃん。
不妊手術(断種)やロボトミーとか。選民意識も甚だしい。
選ばれた人にはユートピア、そうでない人にはディストピア
 
作者の狙いやカリカチュアは色褪せていない。この本が書かれたのは「1915年」。
優性思想がもてはやされたそうな。

いまはダイバーシティなる言葉がお題目化しているが。
予言書的本。つーか、村田紗耶香の小説のさきどりのような作品。

『黄色い壁紙』の拙レビューはこちら。

soneakira.hatenablog.com