読む、モロトフ・カクテル

 

 


『まぜるな危険』高野史緒著を読む。

作者の『カラマーゾフの妹』は、ドストエフスキーの未完に終わった
小説『カラマーゾフの兄弟』の勝手に続編。
奇抜な発想に感心したが、長篇に仕立てあげた作者の筆力にも感心した。

 

この本は同じ手法で書かれた短篇集。「ロシア文学+SFのリミックス」と表記されていて、各篇の巻頭に作者がネタ元をバラしている。

 

リミックス、パロディ、パスティーシュマッシュアップ、類語はいろいろあるが、
そこになぜかお笑いのトム・ブラウンの合体ネタも浮かび上がって来た。
要は面白いか、楽しめるか。で、ぼく的には堪能できた。
以下、各篇を手短に紹介。

 

『アントンと清姫
安珍清姫』をベースにした『アントンと清姫』という悲恋物。道成寺の鐘とかつてクレムリンでつくられた世界一の鐘とを結びつけた話。
ラトヴィアからの留学生オレグスが散歩する谷根千。『アントンと清姫』の真相は。プロレス好きなら『アントンとミツコ姫』というのもありか。

 

『百万本の薔薇』
加藤登紀子のカバーで有名な楽曲。グルジアにある広大なバラ園、「優性品種研究所」で立て続けに責任者が亡くなる。モスクワから調査に来たフィーリン。妖しいバラに魅せられた人々。

 

『小ねずみと童貞と復活した女』
屍者の帝国」+「白痴」+「アルジャーノンに花束を」+「ブレードランナー」が合体。昔、「アルジャーノンに花束を」のレビューをパスティーシュで平仮名でチャーリーになりきって書いたことを思いだした。SF同人誌二次創作作品風。

 

『プシホロギーチェスキー・テスト』
罪と罰」+「罪と罰」を下敷きにした乱歩の「心理試験(プシホロギーチェスキー・テスト)」が合体。ペテルブルクの古本屋台で60年後に刊行されたエドガワ・ランポの冊子を入手したラスコーリニコフ。他にもなぜか日本人作家の未来の作品の翻訳が。

 

桜の園のリディヤ』
桜の園」+佐々木淳子の漫画「リディア」の合体。漫画「リディア」は未読だが、「桜の園」は好きな戯曲なので世界が入って来た。桜の園が伐採された後日談的内容。

 

『ドグラートフ・マグラノフスキー』
ドグラ・マグラ」+「悪霊」の合体。初期ソローキンの作風から脂気を抜いた感じ。いちばん危険な作品。


モロトフ・カクテル
瓶の中にガソリンなど可燃性の液体を入れて布切れなど可燃性のもので栓をし、栓に火を点けて投げる簡易的な武器。火炎瓶。1939年、ソ連軍がフィンランドに侵攻(冬戦争)した際、資材不足のフィンランド軍は火炎瓶を対戦車兵器として使用した。
ソ連モロトフ外相が国際連盟で冬戦争でのフィンランドに対する無差別爆撃について追及された際、「資本家階級に搾取されているフィンランドの労働者への援助のためパンを投下した」と言い逃れたため、ソ連軍の収束焼夷弾は「モロトフのパン籠」と呼ばれた。それに対するお礼の特製カクテル」という皮肉の意を込め、火炎瓶が「モロトフ・カクテル」と呼ばれるようになった。
出典元:モロトフカクテル (もろとふかくてる)とは【ピクシブ百科事典】

 


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