ぼく、ブロッコリー。通称、コリー。お払い箱のジョッキー(騎手)ロボット

 

 


『千個の青』チョン・ソンラン著 カン・バンファ訳を読む。

 

ぼく、ブロッコリー。通称、コリー。元々ぼくはヒューマノイド(人型ロボット)。ジョッキー(騎手)ロボットとして競走馬トゥデイとレースに出ていた。ところが、落馬。壊れてお払い箱となった。

 

それを母親に内緒でこっそりお小遣いで買い取ってレストア、改造してくれたのがヨンジュ。彼女はロボティクスに天賦の才がある。その姉のウネ。ポリオが原因で車椅子生活をしている。


なぜ内緒だったのか、聞いてくれる?姉妹の母親がボギョン。彼女は若い頃は俳優として映画に出演。注目を浴びていた。ボギョンが地下のスタジオにいたとき、火事に遭う。消防士の勇気ある行為で救出される。しかし、全身に大火傷を負う。彼女と消防士は恋に落ち、結婚。姉妹が生まれる。まもなく夫は亡くなる。

 

女優の夢を断念してボギョンは銀行に勤務する。銀行業務を人間に替わってヒューマノイド(人型ロボット)が行うことになり、リストラされる。料理上手の彼女は食堂を開くが、ロボットにきっと強い恨みを抱いているだろうとヨンジュたちは思い、ぼくを隠していた。


相棒のトゥデイーが「関節をすりへらして」で全力で走れなくなり、処分されることを知る。二日後に安楽死。ぼくはなんとか阻止させたい。そしてもう一度、トゥデイをレースに出させたい。「千個の単語しか知らない」ぼくは、懸命に母親や姉妹、トゥデイの担当獣医などを説得する。


ぼくの無謀、無垢とも思える行動が、それまでの母娘や姉妹のわだかまりを吹き飛ばす。「止まった時間が」再び、動き出す。正攻法では無理なのでちょいと頭を使った手口で、トゥデイはレースに出場できる。奇跡は起きるのか。


ヨンジュに修理されたぼくは、なんだか意識が芽生えたような気がするのだが。量産型でのぼくのバグが何やら起因しているかも。

 

人、ヒューマノイド、動物(競走馬)。それぞれの命や生涯をテーマにした作品。ま、SF風味ではあるが、読んでいてしんみり、じんわり、ふんわりとしてくる。『千個の青』の「青」とは、「青春(あおはる)」の「青」なのだろうか。

 

最後に再び、ぼくは念願のトゥデイに乗ることができた。風を切って走る。でも、またもや落馬。薄れいく意識。でも、きっとヨンジュがうまいこと修理してくれるだろう。

 

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